◆住宅販売(新築・中古)件数:政策対応等もあり、中古住宅販売は堅調
住宅販売(季節調整済、年率)は、15年5月の新築住宅販売が54.6万件、中古住宅販売が、535万件となった(図表7、8)。
新築住宅販売は08年2月(59.3万件)、中古住宅販売は07年3月(546万件)に次ぐ水準である。米国の住宅販売の特徴として、中古住宅販売件数が新築住宅を大幅に上回っていることが挙げられる。中古住宅販売と新築住宅販売の規模を比べると、住宅販売がピークであった05年には5倍程度であったものが、足元ではおよそ10倍程度まで拡大している。
これは、足元の新築住宅販売の水準がピーク時の4割弱に留まっている一方、中古住宅販売は7割超と、新築住宅の回復が鈍いことが原因である。住宅バブルの崩壊や金融危機に伴い新築住宅から値段の安い中古住宅に需要がシフトしていることが分かる。
一方、15年5月の中古住宅販売では、初めて住宅を購入する人の割合が32%と、12年9月以来の高さとなった。
連邦住宅抵当公庫(ファニーメイ)、および連邦住宅金融抵当公庫(フレディマック)は、14年12月より両社の信用基準を満たす住宅購入者のうち、初めて住宅を購入する人向けに住宅ローンの頭金の最低水準を従来の5%から3%に引き下げる制度(1)を開始した。
これは、住宅ローン支払い能力のある人に対して住宅購入のハードルを下げることを狙ったものだが、これらの効果が出たとみられる。さらに、米連邦住宅局(FHA)も15年1月より、住宅ローン保険料の50bpsの引き下げを実施している。
FHAの措置は、初めて住宅を購入する人だけを対象にしている訳ではないが、同局はこの措置に伴い、今後3年間で初めて住宅を購入する人が25万人増加すると試算しており、FHAの保険料引き下げも新規の住宅購入を促しているとみられる。
◆住宅価格:住宅購入し易い穏やかな価格上昇が持続
米国の住宅価格の代表的な指標としては、米国連邦住宅金融局(FHFA)が公表するFHFA住宅価格指数と、格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ社が公表するケース・シラー住宅価格指数がある。両指数ともに、同一物件で複数回取引されたサンプルだけを用いて、価格指数を推計する「リピートセールス価格法」を用いている。
しかし、前者はファニーメイ、フレディマックの住宅ローン審査を通過した物件だけが対象となっており、高額物件が含まれない一方、後者は高額物件や信用力の低い住宅ローンの物件も含まれるなど、より幅広い物件が対象となっている所に特徴がある。
さて、住宅価格の水準をみると(2)、両指数ともに06年から07年にかけてピークをつけた後、11年にボトムをつけているが、ピークからの下落率はFHFA価格指数がおよそ21%、ケース・シラー価格指数では、それより少し大きくおよそ26%となっている(図表9)。
さらに、両指数ともに足元まで住宅価格の上昇基調が持続しており、ピークからは低い水準に留まっているものの、ケース・シラー価格指数がおよそ7%、FHFA価格指数に到ってはおよそ2%下落の水準まで下落幅は縮小している。
次に、住宅価格変動のスピードをみると、住宅価格(季節調整前、前年同月比)は08年に両指数ともに2桁を超えるマイナスとなった後、13年にはFHFA価格指数が1桁台後半、ケース・シラー価格指数では10%を超えるなど、急激な上昇となった。
あまりに住宅価格上昇のスピードが早い場合には、住宅購入予定者にとっては購入し難くなることが考えられる。その点、足元では両指数ともに4~5%程度で安定してきており、住宅価格上昇のスピードは穏やかになっている。
さらに、ケース・シラー住宅価格指数について、住宅価格の水準と前年同月比変化率を主要都市毎にみると、都市によってその水準や動きに大きなバラつきがあることが分かる(図表11、図表12)。
ロスアンゼルスとマイアミの住宅価格が大きく変動する一方、デンバーでは安定している。また、これらの都市の多くは未だ06~07年のピークを下回っており、マイアミでは3割近い下落になっているものの、デンバーでは前回高値を上回っている。