◆住宅取得能力指数:住宅ローン金利の上昇幅が小幅なら住宅取得に問題なし

ここまで、住宅販売や価格などの状況についてみてきた。今後の住宅需要を占う上では、住宅価格や住宅ローン金利で決まる住宅ローンの月々の返済額が所得に対してどの程度の負担となるかをみることも重要である。これらをみる上では全米不動産協会(NAR)が公表している住宅取得能力指数が参考となる。

この指数は中古住宅価格や住宅ローン金利から住宅ローン元利金支払い額を試算し、無理なく住宅ローンが支払える所得水準(3)(住宅取得のための最低所得水準)と、実際の所得水準を比較するものである。

すなわち、実際の所得水準が最低所得水準を上回る(同指数が100を超える)場合には、住宅取得に必要な最低水準を上回る所得を得ているとみなすものである。同指数は、住宅価格や住宅ローン金利の低下、所得の増加によって上昇(改善)する。

実際の住宅取得能力指数をみると、住宅価格が高騰し、住宅ローン金利が今より高かった06年には100近辺まで低下しており、所得の余裕がほとんどなかったことが分かる(図表13)。

その後、住宅価格および住宅ローン金利の低下に伴い、12~13年にかけて同指数は一時200を超える水準まで上昇し、足元では住宅価格の上昇もあって幾分低下しているものの、それでも160程度に留まっており、住宅取得が十分可能な所得水準であることが分かる。

次に、今後所得が変わらないと仮定した場合に、住宅価格や住宅ローン金利の変動によって、どの程度指数が変動するか試算を行った(図表14)。

これをみると、住宅ローン金利が現状から1%程度上昇し、住宅価格も現状から15%上昇したケースであっても、同指数は127.5と住宅取得に必要な最低所得を3割近く上回っているほか、2000年からリーマン・ショック前までの平均(122.9)も上回っている。

このため、仮にFRBが政策金利を引き上げたとしても住宅ローン金利の上昇幅が小幅であれば住宅市場への影響も住宅ローンの負担面からは限定的であると考えられる。

住宅取得能力指数

◆センチメント:建設業者、消費者ともにマインドは非常に良い

最後に、住宅建設業者と、消費者のセンチメントをみてみよう。建設業者のセンチメントを示す指標には住宅市場指数がある。

これは、全米住宅建設業協会(NAHB)が建設業者に対して、1.足元の新築住宅販売状況、2.今後6ヵ月の新築住宅販売状況見込み、3.客足動向、の各項目について回答してもらい、指数化したものである。住宅市場指数は0から100の範囲で変動し、数値が高いほどセンチメントが良好であることを示している。

足元の住宅市場指数は、7月まで2ヵ月連続で60となっており、05年11月(61)に次ぐ10年ぶりの高水準となっている(前掲図表1)。

指数の中身をみると、客足については改善がもたついているものの、新築住宅販売状況、とくに今後6ヵ月の販売見込みは15年に入ってから改善スピードが加速している。ここでも、前述のファニーメイ、フレディマック、FHAなどの住宅購入を促すための対応が奏功している可能性が示されている。

次に、住宅購入に関する消費者のセンチメントをみてみよう。ミシガン大学は、住宅購入環境指数(現在が住宅の買い時と考えるか)を公表している。同指数をみると、足元は、160近辺で推移しており、買い時と回答した割合は、およそ8割に上るなど、住宅購入意欲が強いことが分かる(図表15)。

住宅購入環境、失業率見込み

この背景として、労働市場の回復に伴い、雇用不安が後退していることが指摘できる。同大学は、1年後の失業率見込みについても調べており、同指数は足元で100を超えた水準で推移している。

これは失業率が下げるとみている人が上がるとみている人より多いことを示している。さらに、同指数は過去と比べても、高い水準となっており、雇用不安の後退が住宅に対する強い需要の一因と見込まれる。