クレディスイス,冨田和成,プライベートバンカー,大橋雅英

口座を開けるのは金融資産10億円以上を有する資産家から。いわゆる普通の商業銀行とは全く異なる金融機関であるプライベート・バンク。この知られざる世界を紹介するために、PB業界のグローバル・リーダー、クレディ・スイスで事業を統括するプライベート・バンキング共同本部長大橋雅英氏にお話をお聞きした。

【関連記事】
クレディ・スイス、大橋雅英氏インタビュー(2)
クレディ・スイス、大橋雅英氏インタビュー(3)

インタビュアーは本誌にも寄稿頂いている日本最大の金融メディアZUU onlineを運営する株式会社ZUUの冨田和成氏。(文:加藤俊、この記事は Biglife21 に掲載される予定です)

プライベート・バンクとは?

冨田: 基本的なことで恐縮ですが、「プライベート・バンキングとはどういったサービスなのか」というところからお聞きしていきたいと思います。例えば、これだけオンライン証券が発達してあらゆる金融商品が個人で購入できる時代に、プライベート・バンクに期待されるのはどういった点なのでしょうか。

大橋: 正直な話、決まった商品を一番手数料の安いところで買いたいのであれば、それは残念ながら私どもの最も得意とするところとは言い難いです。もっと安くスピーディーに提供できる金融機関さんがいます。私どものお客様の多くは、事業オーナーの方など大変お忙しい方です。ご自身の資産運用にあまり時間を費やせない方が多い。

ですから私どもに期待されるのも、安心して本業にご専念頂けるよう尽くすという点にあります。この文脈上で金融資産の運用・管理はもちろんのこと、大切な事業価値を守り高めるためのM&Aや事業承継等の専門家集団として、お客様を全面的にサポートしていきます。

そのため私どもは最初に商品ありきの話はしません。お客様のニーズや人生設計に合ったポートフォリオを作るところから始めますので、金融商品やサービスを組み合わせた運用プランもお客様一人ひとりによって異なります。そして運用プランを実行した後もモニタリング・検証を常に行い、定期的に結果のご報告を行っていくというお付き合いをさせて頂くのです。

冨田: 日本でのサービスはいつから行っているのでしょうか?

大橋: クレディ・スイスは1856年にスイスのチューリッヒに設立され、日本には1970年代から進出しています。多くのお客様の資産をお預かりしながら、満を持して2009年に国内富裕層向けにプライベート・バンキングを開始しました。現在では、金融資産10億円以上を有するお客様の総合的な資産管理・運用を行っています。

冨田: 他の金融機関との違いはどこにあるのでしょうか。

大橋: やはり事業の中核がプライベート・バンキングということです。従業員の半数以上がプライベート・バンキング事業に携わっています。同時に、世界有数のインベストメント・バンキング(投資銀行)部門やアセット・マネジメント(資産運用)部門が、プライベート・バンキングを強力にサポートしています。

他の金融機関さんとの違いというのは、お客様とのお付き合いの在り方にも見てとれます。数十年ないしは世代を越えてお付き合いをさせて頂くという考え方が深く根付いています。金融の本場スイスから脈々と伝えられてきた考え方の重みとでも表現できましょうか。

日本進出の背景

冨田: しかし、そうしたクレディ・スイスさんですが日本でプライベート・バンキングを展開したのは2009年と外資系金融機関でも後発です。むしろ他の金融機関が撤退していく中、強化という動きが非常に印象的でした。何故リーマン・ショックの後というあのタイミングでの進出だったのでしょうか。

大橋: これはリーマン・ショックがあったから日本に進出を決めたということではなく、日本でのサービスを準備している段階で、たまたまリーマン・ショックが来てしまったというのが本当のところなのです。

ただ、そこで方向転換をしないで予定通りローンチをした背景には、プライベート・バンキングを中核事業とするクレディ・スイスにとって、世界第2位の富裕層マーケットである日本が戦略的に極めて重要だということがあります。

また、バーゼル規制(国際金融機関の健全性を維持するため自己資本比率規制の強化が2010年2月に承認された。バーゼルⅢ)およびスイス金融当局によって、厚い自己資本比率が求められているなか、プライベート・バンキングは資本を有効に活用できる戦略的に重要な事業ということもあります。

冨田: 且つボラティリティー(業績の変動の激しさ)が低いということもありますよね。

大橋: おっしゃるとおり。比較的ボラティリティーが低い事業です。それと、従来のオフショア型のプライベート・バンキングの在り方だけでは、事業としての成長性に限界があることも遠因としてありました。本店スイスやシンガポール、香港などのブッキング・センターにいながらにして海外のお客様の資産を預かる在り方は、これからも大きなビジネスであり続けます。ただ、一昔前のようにスイスの守秘義務だけで資産が集まる時代では、もうありません。(次回7月26日公開予定)

大橋雅英(おおはし・まさひで)…クレディ・スイス銀行東京支店、クレディ・スイス証券株式会社マネージング・ディレクター兼プライベート・バンキング共同本部長。1960年愛知県生まれ。神戸大学卒業後日系・外資系金融機関でリテール・法人営業および20年以上のプライベート・バンキング業務経験を経て、現在に至る。

【関連記事】

クレディ・スイス、大橋雅英氏インタビュー(2)

クレディ・スイス、大橋雅英氏インタビュー(3)

日経新聞・四季報などがネット上で全て閲覧可!?その意外な方法とは

年金情報流出!あなたの情報を守る「予防医療」とは?

NTTを超える数兆円超の上場?元国営3社のIPOに迫る