アベノミクスにより超円高時代は終焉を迎え、今年6月に為替相場は2012年12月以来12年ぶりに1ドル=125円台となった。

そうした中、日銀の黒田総裁は衆院財務金融委員会で「実質実効為替レートでは、かなりの円安の水準になっているのは事実。ここからさらに円安はありそうにない」と発言。日銀総裁が為替相場の具体的な水準について言及するのは異例であり、この発言を受けて急激に円高に振れた。

円安の進行で輸出企業の業績は好調に推移しているが、各社は為替レートをいくらに想定しているのか。その想定レートと足元の為替相場での円安水準とのかい離によっては、輸出企業を中心に業績の上振れが見込まれる。


約6割の企業が1ドル=115円に想定

東京商工リサーチによると、東京証券取引所1・2部に上場するメーカー143社のうち、2016年3月期決算の業績見通しにおける期初の想定レートは、全体の58%にあたる83社が1ドル=115円とした。120円が24社、118円が13社、110円が11社、117円が7社と続き、想定レートの最安値となる125円に設定したのは1社のみであった。

1年前の期初想定為替レートと比較しても、100円から115円に変更した企業は全体の約45%65社、100円から120円が16社、100円から110円が8社、98円から115円が6社となり、多くの企業が昨年より想定為替レートにおける円安水準を切り上げている。

しかし直近のドル円相場をみると、123円台から124円台で推移しており、円安水準を切り上げてもなお、大部分の企業にとっては想定より円安に振れているのが実情だ。

また、ユーロの想定為替レートについては、レートが判明した97社のうち、1ユーロ=120円、そして130円とした企業がそれぞれ40社で、合わせて全体の8割を超えた。足元のユーロ相場は1ユーロ=135円台と、こちらもドルと同様に多くの企業の想定レートよりも円安の水準で推移している。


想定以上の円安 企業業績のさらなる押し上げに期待

2015年3月期決算で、純利益が日本企業として初めて2兆円を超えたトヨタ自動車 <7203> は、円安により営業利益が2,800億円も押し上げられた。そのトヨタは、2016年3月期の想定為替レートは1ドル=115円(2015年3月期は110円)、1ユーロ=125円(同139円)に設定しており、足元の為替相場は想定より円安方向で動いている為、さらなる追い風となりそうだ。

円安による業績改善などを受けた景況感の先行きについては、日銀の全国企業短期経済観測調査(短観)でも明るさが示されている。6月の業況判断指数(DI)は、大企業製造業では前回3月調査から3ポイント増のプラス15だったが、3ケ月先はプラス16となった。

今後の為替相場におけるドル円については、米連邦準備制度理事会(FRB)が年内にも利上げをするとみられ、ドル高の後押しとなる。

ほかにも、ユーロ円相場において最大の懸念だったギリシャの債務問題で、追加の支援をユーロ圏首脳会議で大筋合意をしたことから、ユーロ相場の安定につながるともみられている。輸出企業にとっては、円安による業績への援護射撃は当面続きそうだ。(ZUU online 編集部)

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