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(写真=PIXTA)


研究員の眼

少子高齢化、人口減少が進むわが国において、かつてから経済の内需を支える潜在力として高齢者の消費に期待する見方がある。国内の高齢者の人口は今後も増加し続け2040年には約3800万人に到達する。さらに世界の高齢者人口はやがて10億人を超えていく見通しである。

「人口=市場」と捉えたときに、拡大を続ける高齢者市場を如何に開拓できるかは、個々の企業のみならず国内経済全体の発展に大きく関わることである(*1)。この点、新聞報道によれば2014年度末の家計の金融資産残高は1708兆円、その約6割(1025兆円)が高齢者に偏っているとされる(*2)。

しかし、年金を主な収入源として暮らす高齢者にどれだけの消費力があるのか、懐疑的な見方をする人は少なくない。貧困にあえぐ高齢者の姿を報じるメディアも散見され、高齢者の財布の紐は硬いということもよく言われる。

高齢者世帯の貯蓄と所得の分布の状況から、「ストックリッチ・フロープアー(貯蓄は豊かだが所得は少ない)」ということだったり、貯蓄高の格差から高齢者は二極化している(一部の富裕層とそれ以外の大層)ということをよく見聞きする(具体的な貯蓄・負債、所得等の状況については後掲データ参照)。果たして高齢者と消費に係わる実態はどうなのだろうか。

そこで高齢者の毎月の家計の状況を今少し丁寧にみたのが図表1である。国民生活基礎調査(厚生労働省)のデータをもとに、「可処分所得額(*3)」と「家計支出額(*4)」の関係を世帯ごと(かつ世帯主の年齢別)に照合した結果を示している。

可処分所得額と家計支出額の大きさを比べ、毎月の収支がマイナスになっていると予測される世帯を【A】に、収支が均衡していると予測される世帯を【B】に、収支がプラスになっていると予測される世帯を【C】のグループとして区分した。

その結果(A~Cに分けた世帯数の割合)をみると、世帯全体では「A16%B33%C51%」の状況であった。注目する高齢者世帯についてみると(65歳以上計の部分)、「A17%B42%C41%」という状況であった。

なお、この結果は、家計支出額が毎月一定とした上で年間の可処分所得額と比べているため、大きな買物だったり、旅行に行くなどで一時的に増加する支出までを見込めていない。したがって、より正確な実態としては、C⇒B、B⇒Aに区分される世帯が増える可能性があることを考慮する必要がある。

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