家電業界では、"小さく・軽く・贅沢に"というコンセプトにもとづく商品が登場するなど、シニアを意識した商品開発が進んでいることが確認されるが、こうした高齢者のニーズを踏まえた対応(いわゆる"シニアシフト“)があらゆる業界各社において推進されていくことを期待したい。

高齢者の消費力は前述した「所得」の面だけに止まらず、「貯蓄」も合わせれば相応のポテンシャルがあると考える。その消費力を引き出せるかどうかは個々の企業の業績のみならず、日本全体の経済にも大きな影響をもたらすことにもなる。

難しいテーマではあるが、国民の豊かな長寿の実現のため、また日本社会の発展のためにも欠かせられないテーマであるだけに、新たな金融商品の開発といったことも含めて、業界各社のシニアシフトに向けた取組みに期待したい。筆者としても高齢者の消費力が活かされる市場の創造に向けた研究を深化させていきたいと考えている。

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(*1)前田展弘「人口減少未来における成長視点-世界の高齢者市場を射程に入れたイノベーション-」(ニッセイ基礎研/研究員の眼、2015.6.9)
(*2)日経新聞(2015年7月7日朝刊)による報道
(*3)可処分所得とは、所得から所得税、住民税、社会保険料及び固定資産税を差し引いたものであり、「所得」はいわゆる税込みの額であるのに対し、「可処分所得」は手取り収入に相当する
(*4)この家計支出額は、平成26年5月中の家計上の支出金額(飲食費、住居費、光熱・水道費、被服費、保健医療費、教育費、教育娯楽費、交際費、冠婚葬祭費、その他の諸雑費など)である
(*5)ライフサイクル仮説とは、個人の消費行動はその個人が一生の間に消費することのできる所得の総額(生涯所得)を念頭におき、死ぬ時に貯蓄残高がゼロになるように消費する、という消費・貯蓄理論

前田展弘
ニッセイ基礎研究所 生活研究部 (東京大学高齢社会総合研究機構客員研究員)

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