2022年の冬季オリンピックの開催都市が北京に決定したが、開催にあたって雪不足と大気汚染が懸念されている。特に北京など中国の大都市における大気汚染の深刻さについてはこれまで報道されているとおりである。

大気汚染の大きな原因が自動車の増加だ。日本自動車工業会の『世界自動車統計年報』第11集によると、中国の自動車保有台数は、2000年に1570万台であったものが、2010年には7720万台を超え、アメリカに次ぐ1世界2位の自動車保有台数となっている。

自動車からの排気低減に向けて、2010年から進められているのが新エネルギー車の普及にむけた「エコカーの購入補助制度」。中国政府はこの政策で2015年までに50万台のエコカー販売を目指していたが、現在の販売台数は目標を大きく下回る水準にとどまった。


なぜ中国にエコカーは普及しないのか?

この購入補助制度は2009年の「十城千両プロジェクト(25都市でエコカーの導入を促進する取り組み)」に連なるエコカー導入推進施策である。ここでいう「エコカー」には「電気自動車(EV)」と「プラグインハイブリッド(PHV)」に加え、2013年から「燃料自動車」が対象となった。しかし、長らくエコカーの本命であったハイブリッドカーは対象外だった。

中国は国策として、EVを次世代エコカーの最有力候補と考え、国内メーカーによるEV開発を支援すしてきた。国内産業保護、育成政策は中国の基本政策の1つだが、中国政府が露骨なEV優遇策をとったのは、中国政府なりの「勝算」があったためと考えられる。

EVは、内燃機関周りの部品の連動や耐久性・信頼性が必要な「エンジン車」や、ギアの精密な連動性が求められる「ハイブリッド車」とは異なり、モーターと電池の組み合わせでできる単純構造のアセンブリー製品である。PCや家電製品など中国が得意としてきた組立製品と同様に、大量生産によりコストメリットを出すことができると想定されたのだ。


ハイブリッドカーに高まる期待

しかし、現在中国の国内世論は変化しつつある。
新華社によると、改善が必要な大気汚染の現状とエコカーの普及の遅れへの失望感から、現在、世界中で700万台以上は販売し、技術も成熟したハイブリッドカーへの期待が高まっているのだ。また多くの専門家も同様に、EVの技術はいまだ発展途上であり、航続距離の短さ、価格の高さ、充電の難しさから、実用の域には達していないとも考えており、今後の大気汚染改善のために、ハイブリッドが重要と考えるようになっている。

中国で最も有名なハイブリッドカーは、トヨタが中国市場向けに投入している「双擎(シュワンチン)」だが、この「双擎」は2012年の販売開始以降、外国車に対する高い関税率にもかかわらず、年々着実に販売台数を伸ばしており、今後もさらなる伸びが期待されている。

【関連記事】
・トヨタがプリウスPHVを一部改良、値下げも
・停電大国アメリカで電気自動車(EV)は普及するか?