中国の面子と現実の落としどころ

現在、中国の購入補助の対象となる「エコカー」としては、EV、PHV に加え、燃料自動車が挙げられている。このうち燃料自動車に関しては、トヨタ自動車 <7203> が2015年より「MIRAI(ミライ)」の生産を開始するなど、その普及に向けた動きが進んでいる。

とはいえ、売目標は全世界でわずか700台、燃料である水素の充填を行うための水素ステーションの建設も始まったばかり。そのため近い将来に中国市場において「燃料電池車」がエコカーの本命となる可能性は低いと考えられる。

そのため、今後の2022年の冬季オリンピックに向けた、大気汚染改善のための本命「エコカー」として、ハイブリッドへの期待は今後も高まるだろう。

しかし、現状の中国政府の動きを見る限りでは、自身の「面子」を保つため、あくまでもEVの開発にこだわる可能性が高い。その意気込みが強く表れているのが2014年5月に設立された「中国電動車百人会(China EV 100)」である。この「China EV 100」では中国科学技術部部長のWan Gang氏を含む政府高官が顧問を務め、フォルクスワーゲン、BMW、トヨタ、ホンダ <7267> など大手自動車メーカーの役員などがメンバーとなっており、産官一体となったEVの実用化に向けた動きが活発化することも予想される。

ただ現状は、前述のように「航続距離の短さ」や「充電施設の整備」などEVの実現に向けた課題は山積しており、数年で劇的に状況を変えられる見込みは極めて低いと言わざるを得ない。

中国政府は、今後国内EV産業育成のための戦略展開という「面子」と、国内における大気汚染改善の必要性という「現実」の間で、どこにどのように落としどころを見つけるのかが、今後問われることになる。

(ZUU online 編集部)

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