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(左から)樋原、徳重、砂金、平野、ウッザマン各氏(写真=ZUU online編集部)

シリコンバレーのベンチャーキャピタル、フェノックス・ベンチャー・キャピタル共同代表パートナー兼CEOのアニス・ウッザマン氏が新著『世界の投資家は、日本企業の何を見ているのか』(KADOKAWA)を上梓した。刊行記念のパネルディスカッションが都内で行われ、テラモーターズやインフォテリア、サムライベンチャーズなどのCEOらが集まり、日本のスタートアップ事情や問題点などについて熱く議論を交わした。


スタートアップからの営業電話を簡単に断らないで

第1部のパネルディスカッションは、早稲田大学ビジネススクール准教授の樋原伸彦氏がモデレーターを務め、パネリストとしてウッザマン氏、徳重徹氏(テラモーターズ社長)、砂金信一郎氏(マイクロソフト)、平野洋一郎氏(インフォテリア社長)が登壇した。

最初に掲げられたのは「(大企業が)スタートアップと連携するにあたって何がカギとなるのか」という命題。パネリストたちは同時に、日本のスタートアップを取り巻く環境で問題と思っていることについて問いかけられた。

徳重氏は「一番の課題はカルチャーの違い」と話した。「インドやバングラデシュは大企業でもアグレッシブ」と紹介したうえで、(大企業側にも)ベンチャー的なカルチャーを身につけて欲しいと訴えた。

砂金氏はまずマイクロソフトがベンチャー支援をする理由について説明。イベントで登壇すると壇上からはリンゴマーク(アップルのMacBook Air)ばかり目に入ってくるというエピソードを披露し、「マイクロソフトがもう一度リスペクトを取り戻すにはどうしたらいいか」という視点を持っていると話し、ベンチャー支援という非営利活動へ注力している背景を説明した。

平野氏は「大企業は研究開発がすべて自前主義で、その傾向がが顕著。これをやめるべき。逆にスタートアップは新しい技術や発想はあるがマーケットリーチが弱いのだから補完すればいい」と述べた。

ウッザマン氏は「みなが意識を変えることが必要」と主張。「たとえば自分の子どもが東大出てもベンチャーつくることを認めてあげましょう」と呼びかけた。さらに会場の参加者に「明日、会社でスタートアップから電話がきても『リスクとれない』と無碍に断らないでほしい」とも訴えた。さらに「日本の教育システムの中にイノベーション、アントレプレナーシップを入れるべき。アメリカではスタートアップをつくる部活がある」と話した。


日本のエンジニアは技術あるがシャイなのが問題

平野氏はまた「人材の流動性が問題」とした。ウッザマン氏が「日本の技術は高い」と話していたことに対して、「高い技術があるといっても、どこにあるのかが問題。大企業の中央研究所に埋もれていては意味がない」と注釈した。さらに知人の研究者が「やりたいことができない」と愚痴を述べていることから、「やりたいことやるためにスタートアップやればいい」というと、「お金儲けをしたいわけじゃないと言われる」と話し、起業に対するイメージがよくない実情を憂いた。

起業家・起業精神についてウッザマン氏は「エンジニアがシャイなことが根本的な問題。逆にスタートアップはチャラチャラしているイメージ。アメリカはスタンフォードなどでエンジニアが起業したりして、大きな違いがある」と指摘。徳重氏は「日本だけアントレプレナーシップがアプリシエイト(高く評価)されていない。就職ランキングの人気起業をみても昔と変わっていない」と嘆いた。

最後に会場から「日本はアニマルスピリット失ったのか」という質問が寄せられた。徳重氏は「日本人は農耕民族で……という議論には与しない。ただ真面目すぎるから、近くで例を見ない分かってもらえない。だから誰かが圧倒的な成功事例を出せばいい」と述べると、ウッザマン氏が「徳重さんみたいな人からインスピレーション受けて欲しい」と呼びかけた。


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