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(左から)加瀬、田村、榊原、石井、ウッザマン各氏(写真=ZUU online編集部)


子供や部下を否定するな なんでも「いいね!」から始めよう

続く第2部は「日本においてスタートアップ/イノベーションブームはバブルで終わってしまうのか?」と題して行われた。

モデレータとして加治慶光氏(アクセンチュア チーフ マーケティング イノベーター)、パネリストには田村耕太郎氏(元議員、日本戦略情報機構シンガポール法人CEO)、榊原健太郎氏(サムライインキュベートCEO)、石井芳明氏(経済産業省新規産業室 新規事業調整官)が登壇した。

イスラエル在住の榊原氏は現地の状況について報告。日本のスタートアップはBtoCが多いが、イスラエルはBtoBが多く、ピッチ(講演)の資料にパテント(特許権)の話が入っていると紹介。石井氏は、いまのスタートアップの隆盛が4回目のブームと指摘。「かつてはちょっと変わった人がベンチャーをめざしていたが、最近は普通の人、大企業を辞めてやろうという人が出始めた」と分析。このほか、独立系VCが頑張っていることや大企業のコーポレートベンチャーキャピタル、アクセラレータの活動機運をが高まっている状況を報告した。また「政府も変わってきている。初めて成長戦略でベンチャーが柱になったし、総理が直接表彰するベンチャー大賞ができたのもその一例」と話した。

田村氏はこれから期待できる産業を「介護と観光、健康くらい」としたうえで、「とはいえ30年もすると老人すら減り始める。一方でASEAN6億のマーケットがある。日本人だけ、日本語だけ、日本でだけやっていたらダメ。国籍は関係ない」と話し、「シリコンバレーのスタートアップは『アメリカのために』なんて言ってない。みな『世界のために』といっている。テスラモーターズCEOのイーロン・マスクはトヨタをやっつけようとしているわけじゃない。パレンティアだってペイパルだってそうだが、スタートアップは世界を変えようとしている」と意識の違いを指摘した。

榊原氏は「日本の中でいくらオープンイノベーションといっても、クローズドでしかない。ヤフーやサムスンがイスラエルでやっているように、海外でアクセラレータプログラムやってほしい」と述べた。またイスラエルの教育について、小学4年生でC++、兵役に行くとPythonを学ぶという充実した環境であることを報じた。また保護者の姿勢として、「基本親バカで、子供に好きなことをさせるし、なんでも『いいね!』と褒め称える」と話した。一方で日本の企業について、「新人が夢と希望もって大企業に入り、新しいことを提案した瞬間に『もっと実力つけてからにしろ』といわれてしまうから萎縮する」と批判。「上司、先輩はなんでもとにかく『いいね』といってほしい。もし問題があっても、『いいね、でもこういう課題があるから一緒に解決しよう』といえばいい。超親バカな先輩になってほしい」と呼びかけた。

石井氏は大企業のサラリーマンの意識として、「大企業、上のほうは変わりたいと言っている。若い人も分かっているが仕組みがない。社内では新事業でがんばっても評価してもらえないのが問題」と指摘。「意思決定、資源配分の仕組みを、主力事業と分けてつくるべき。日本企業は横並び意識が強いので、頑張っている企業、成功している企業の事例を選んで見せていくしかない」と話した。

ウッザマン氏は「たとえば3年前と比べても大企業の中でも(スタートアップとの連携を模索する)動きは出てきているが、大企業とスタートアップがパートナーシップを結ぶことが一番」と説明。「スタートアップは大企業とカルチャーが違う。そこが分からず合併吸収しても失敗する。日本は企業文化のマージが下手だと思うので、ナレッジのあるコンサルを入れるべきだ」と訴えた。


ダメな企業は一度上場しても落とすべき

会場から「大学発のベンチャーを加速するにはどうすればいいか」という質問があり、石井氏は「技術を事業化する人を増やすしかない。大企業から流動化するとか」と述べた。

田村氏は昨今のIPOブームを批判。「IPOは永遠の成長を約束すること。(一度上場しても)ダメなところは落とすべき」と力を込めた。最後に榊原氏は「イスラエルに是非来て欲しい。ホントのイノベーションはイスラエルで起きている」と笑顔で呼びかけ。石井氏は出席者に「それぞれ立場があるので、それぞれ頑張るしかない。あとは挑戦する人を称える。自ら挑戦すること」と語った。

ウッザマン氏は「日本の技術はトップ。世界で誰にも負けないから自信をもって、マーケティングと英語を学び、プレゼンして欲しい。世界でも評価されると思う。スタートアップには、最初からグローバルパートナーと連携して欲しい。日本からの次のFB、Googleが生まれると思う」と前向きなメッセージを送った。


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