中国株の下げが止まらない。マーケットでも中国に対する悲観的な見方が強く、通貨と為替相場の安定化を目的とする国際機関であるIMF(国際通貨基金)のオリビエ・ブランシャール調査局長も先月、「中国株式市場のバブルは崩壊した」と明言し、中国経済の先行きに対し懸念を表明していた。
世間の注目度が非常に高まっている中国株だが、その認知度は日本株や米国株と比較するとまだまだ低く、時折ニュースに出てくる「A株」や「B株」という言葉の意味や違いを理解している人も決して多くないといっていいだろう。ここでは中国株式市場の概要について触れてみたい。
中国株のマーケットは「本土市場」と「香港市場」の二本立て
中国株のマーケットは本土市場と香港市場の二本立てで構成されている。本土市場(上海証券取引所と深セン証券取引所)に上場する銘柄は、各種の規制が存在するため、外国人にとっては一般的な投資対象とは言えず、海外投資家による中国株の売買は、後者の香港証券取引所に上場する銘柄が主体となっている。
狭義の中国株市場ともいえる本土市場は、上海証券取引所と深セン証券取引所に分かれている。日本でも日本取引所グループが誕生する以前は、東京証券取引所と大阪証券取引所に分かれていたが、中国の本土市場では上海と深センがそれぞれ独自の銘柄を上場させていることに日本とは違う特徴がある。
さらに、中国本土市場においては、上場企業の大部分が国有企業であることも大きな特徴と言え、他国の株式市場以上に、国の政治状況や政策の影響を受けやすいと言えるだろう。
本土市場で取引される株式にはA株とB株の2種類がある
中国本土の上海市場と深セン市場で取引される株式には、それぞれA株とB株の2種類がある。A株とB株は、本土企業が発行するまったく同一の権利、同一額面の株式だが、取引を行う投資家の違いによって分けられている。
A株とは、中国国内で上場され、中国A株市場で取引されている株式のことを指す。正式名称は人民元普通株券。A株の取引は人民元建てで、中国の国内投資家専用の市場となっている(※2013年4月からは香港、マカオ、台湾の人でも中国本土のA株口座を開設することができるようになった)。
もう一つのB株とは、上海証券取引所や深セン証券取引所に上場している外貨建ての株式のことを指す。B株は外貨で取引されるが、株式市場では人民元建てで表記される。
上海証券取引所では米ドルで取引され、深セン証券取引所では香港ドルで取引されていることも特徴の一つといっていいだろう。B株の位置付けは、A株と比べると規模はかなり小さく、A株市場に上場している会社が資金調達を多様化させるために外貨建てのB株も発行しているというものだ。
もともと中国本土の投資家はB株を購入することはできなかったが、2001年2月から中国本土の投資家にもB株市場は開放されている。
ハンセン指数の構成銘柄にも選ばれているものがあるH株
H株は、中国本土で登記を行い、中国証券監督委員会の承認を得て、香港取引所に上場している本土企業の株のことを指す。
企業の登記場所も主要活動拠点も資本も中国本土に置いている企業が、香港市場に上場すると「H株」と呼ばれる。一方、中国国外で登記している中国企業の銘柄は「レッドチップ」と呼ばれる。
H株の売買通貨は香港ドル。香港市場の市況全体を反映する指数であるハンセン指数の構成銘柄にも、H株から選ばれているものがある。
中国株下落の背景
現在の中国経済への先行き懸念の発端となった「人民元切り下げ問題」だが、背景には人民元の為替相場決定方式をIMFが望むような方式に変えることで、人民元の国際通貨化を狙いたい中国側の思惑がある。
中国株式市場については闇雲悲観論に走るのではなく、基本的な概念や用語について理解を深めた上で、中長期的な観点からファンダメンタルを分析する姿勢が大切だ。(ZUU online 編集部)
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