非合理性はロボットにはない、人間の大きな特徴

林要: 人間とAIとが違う部分として、非合理性、感情的に思い入れちゃうという部分も含めて、突破力じゃないかなと思うんです。そうすると人工知能だと冷静に考えて「ここだけ確率が少ないから後回しにしよう」と、なぜか人間でパッションを持っている人はなぜかそこを乗り越えられてしまう。という意味でいくと、好きなことをやっているパワーはおそらく人間にしかない、人工知能にはもてない、そんな非合理性で。そこを頑張ることによって人工知能とは全然違う存在になるんじゃないかなと思うんですよね。

中野信子: 非合理性ってすごく面白い視点だと思っていて、その最たる例としては宗教のパラダイムがありえるわけです。これは広い意味での宗教といっていいと思いますが、必ずしも自明ではないことを自明のものとして受け入れたり、そういう前提にたったほうが面白かったり新しいものができるというのが、実は人間が非合理性を持っていることの合理的な説明なのかなと思うことはありますね。また、「それを人工知能に実装するのかな」と気になっているところです。

ホルモンバランスの影響はAIにとっては「エラー」

林要: (非合理性を人工知能に)実装してもいいけれど、ほとんど意味がないですよね。そういう意味では、人工知能が発展できるというのは一般的に合理的な方向にしか向かないと思いますね。非合理の中には自分のホルモンバランス等に反応してしまうというような、ある意味エラーが入っているがゆえに、そこに突き進めるわけです。このエラーが介在しない人口知能にとっては、エラーにのっとった動きをするというのは極めて難しいと思います。やる意味がないですね。