まとめ

以上、米国、日本及びドイツを中心とする欧州における外資系生命保険会社のプレゼンスを見てきた。それぞれの国における過去からの経緯等もあり、外資系生命保険会社のプレゼンスの現状は異なっている。ただし、グローバル化の流れの中で、どの国においても外資系生命保険会社のプレゼンスが着実に高まってきており、収入保険料や資産等の規模で2割程度のシェアを有する形になってきている。

一方で、米国、日本、欧州という枠組みで考えると、これまでのところ、米国市場では欧州系保険グループが、日本市場では米国系保険グループが大きなプレゼンスを有する形になってきているが、日本の生命保険会社・グループは米国、欧州いずれの市場においても有意なプレゼンスを確保できていない状況にある。

今回の一連の日本の生命保険会社による米国の生命保険会社買収等により、今後この流れに変化が見られる形になるのか、中長期的な動向が気になるところである。

また、海外市場という意味では、今後はアジアや中南米等の市場が拡大を期待されており、これらの市場への対応がグループ全体の成長率確保への鍵になると考えられる。今後はこうした市場も含めた保険会社の海外展開について注視していくこととしたい。

さらに、このレターではあくまでも収入保険料や資産等の規模の面からのプレゼンスの状況を見てきたが、より重要なことは、投下した資本等に対応して高い収益を上げているのか否か、ということである。欧米の大手保険グループの海外展開における収益状況等については、別途報告することとする。

(*1)ここで、外資系保険会社とは、株式の50%超が外国資本の会社を意味している。
(*2)Citigroup の Travelers Insurance Company は MetLife に買収されている。CIGNA Group も Connecticut General Life Insurance の退職事業の多くを売却したため大きくランキングを下げている。また、GE Financial Assurance Group はGenworth Financial Group、American Express Financial は Ameriprise Financial Group となっている。
(*3)以下の表においては、対象年度における資本状況等を勘案しつつ、例えば以下のように取り扱っている。1.ソニーライフ・エイゴン生命については、エイゴンの50%出資会社であるが、外資系会社に含めている。2.PCA生命(現在はSBI生命)については、英国プルデンシャルの子会社としている。3.1998年ではINAひまわりは米国INAの子会社としている。
(*4)欧州の保険・再保険協会連盟で、34のメンバーからなり、欧州の収入保険料の約95%を占めている。
(*5)EU加盟28カ国にスイスを除くEFTA加盟国のアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーを加えた31カ国

中村亮一
ニッセイ基礎研究所 保険研究部

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