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事業の多角化、業務効率の低下、管理コストの増大など企業が抱える問題は様々です。その対策において持株会社設立を選択する会社は少なくありません。
そこで本稿では4月1日に新たな体制でスタートした代表的な企業3社「テレビ朝日」「ケンタッキー」「マルハニチロ」を参考にし、持株会社設立における企業グループ再編を考えてみました。


◎昨今の経済と4月の持株会社設立ラッシュ

リーマンショック、東日本大震災での景気後退から2011年の衆議院解散宣言を起点として各種経済指標は上向きを示しています。安倍首相は、昨年9月にニューヨーク証券取引所において「Buy my Abenomics(アベノミクスは買いだ)」と講演、日経平均は年末として7年ぶりの高値となる1万6291円をつけました。懸念材料はありますが、以前に比べ前向きな論調が増していることも事実です。
このような環境の下、各社の持株会社設立にはどのような思惑があるのでしょうか?


①経営統合で持株会社化する「テレビ朝日」

2012年年度視聴率において開局以来初のゴールデンタイム首位を獲得するなど好調のテレビ朝日は、在京民放テレビ局として3番目に開局したテレビ局ですが、その中では最も遅い持株会社への移行となりました。

そもそも放送事業者は放送法により出資に関する制限があり持株会社設立はできませんでしたが、多額の設備投資が必要となる地上波放送のデジタル化など経営基盤が脆弱なままでは対応できない諸問題解決のため、資金調達能力の高い持株会社制度「認定放送持株会社」の設立が認められることとなりました。
2008年に施行されたこの改正放送法には特定の企業の影響が及ぶことを食い止める規制があります。親会社である朝日新聞社の影響力が削がれてしまうことを避けるため、テレビ朝日は持株会社制へ踏み切れない状況が続いていました。
ところが、前述した地上波放送のデジタル化の他、BS・CS放送でのチャンネル増加と高画質化、インターネットやスマートフォンの普及などテレビを取り巻くメディア環境は大きく変化。この激変期にテレビ朝日は2011年から「日本でトップグループのコンテンツ総合企業」となることを掲げ一定の成果をあげました。更なる展開としての具現化策が地上波・BS・CSの各事業の三波一体運用体制、言い換えればテレビ朝日とビーエス朝日の吸収分割と株式交換での認定放送持株会社「テレビ朝日ホールディングス」の設立でした。

グループ内の経営資源の効率的な運用と戦略の共有化がより可能になり、業務提携や資本提携、新たなビジネス領域への展開など、様々な課題の解決に向け正に三波一体でチャレンジしていくことになります。


②会社分割で持株会社化する「ケンタッキー」

創業者カーネル・サンダースの等身大人形が店舗前に据えられていたり、クリスマスに七面鳥ではなくケンタッキーが食されることは日本では当たり前の出来事です。フライドチキンそのものに馴染みがなかったこの国において、欧米人には奇異に映るこれらの文化は日本ケンタッキー・フライド・チキンの戦略が成功した証しと言えるでしょう。
そのケンタッキーの新たな戦略が、会社分割し持株会社「日本KFCホールディングス」傘下にKFC事業、ピザハット事業、レストラン運営等その他の事業、子会社3社を置く体制への移行でした。

その意図ととして、(1)グループ経営戦略機能の強化、(2)各事業の価値創造力の強化、(3)グループシナジーの発揮の3点が挙げられています。
つまり、グループ間の会社形態を分割することで各事業会社の責任体制や権限・役割が明確化、そのため迅速で柔軟かつ機動的な経営判断が可能になるというものです。
更には各事業が持株会社主導で経営資源を横断的に活用できるため、そこから生まれる相乗効果も示唆しています。

持株会社の傘下に3社の子会社を置く体制は「テレビ朝日」「ケンタッキー」とも同じですが「テレビ朝日」のグループ一体化に焦点をあてた再編に対し「ケンタッキー」は各事業の独立が大きな狙いです。

また、逆に持株会社体制を解消した会社もあります。