ワーキングマザーと娘
(写真=PIXTA)


キャリアコースが二分化

結婚、出産後も子育てをしながら働く女性が増えている。しかし、小さい子どもを抱えるワーキングマザーにとって仕事と家庭の両立は簡単ではない。時間に制限があるため重要な仕事を任されず、その結果、昇進も停滞、仕事へのモチベーションが低下し、やがて退職を選択する―?このような現象は「マミー・トラック」と呼ばれ、社会問題化している。

ワーキングマザーについては、残業ができないことや子供の病気による急な休みがあることなどから、出産前とは職種が変わり、ルーティーンワークや補助的業務にならざるを得ないのが現状だ。管理職に登用できるのは、結局は仕事だけに集中できるひとにぎりの独身女性に限られる。こうして多くの企業では事実上、女性のキャリアは「女性管理職コース」と「マミー・トラックコース」に二分されてしまう。


それでも働き続けた方がいい理由

企業側にしてみれば、時間に制限のある労働者への配慮だったはずが、最終的に人材を失ってしまうことになっている。「マミー・トラック」にはまった女性側はどうかといえば、家族との時間が増やせるということは魅力的ではある。しかしキャリアの側面から見ると、ブランクのある女性の再就職はこの日本社会では事実上かなり難しく、よほど特殊な専門職でもない限り退職前と同じ水準の業務内容と待遇が期待できることはまれである。「マミー・トラック」は企業側、女性側、いずれにとってもデメリットが大きいのである。

女性側にとってまず重要なことは、正社員なら絶対に「社員歴」を途切れさせないようにするということだ。仕事をすることは好きでも仕事内容に不満があるなら、会社に留まりながらスキルアップを図りつつ転職活動をするといった選択肢もある。いったん無職になると子どもを保育園に預けている場合は、退園させなければならないかもしれない。そうなると再就職をしようにも今度は預け先がない、という悪循環で、ますます再就職への道は険しくなってしまう。


将来のマネープランにも影響

共働き世帯では夫婦で力を合わせて住宅ローンを返済しているケースが少なくない。もし妻の退職で経済状況が激変することになれば、持ち家をどうするかという問題も発生する。ローンが支払えなくなったからといって容易に引っ越すことができるわけではない。

日々の生活費や教育資金はもちろんだが、老後資金も忘れてはならない。一般的なモデルケースだと、公的年金の平均月額は会社員と専業主婦の妻で23.3万円、共働き会社員夫婦の場合は約29.6万円となる。年金支給年齢のさらなる引き上げや支給額の引下げなどが検討されている厳しい状況の中、少しでも多く老後に備えておきたい。

今年8月末に女性活躍推進法が成立した。この法律により301人以上を雇用する企業は女性の活躍推進に向けた行動計画の策定義務、女性の採用比率や管理職比率および労働時間の状況などを把握し、改善に向けた取り組みが求められることになった。女性活躍推進に積極的に取り組む企業に対しては、事業入札などで国が優遇するという措置も盛り込まれた。

「マミー・トラック」解消には、法改正をきっかけとした企業の職場づくりにとどまらず、家庭内での家事、育児の分担、女性の意識改革など多方面での改革が必要視されている。(ZUU online 編集部)

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