高齢の親を養っている場合…扶養控除

扶養控除は、70歳以上の親を養っている場合にも適用される。一緒に暮らしているなら58万円、そうでない場合には48万円の控除額となる。そうでない場合というのは、病院などに長期入院している場合などを指し、老人ホームに入居している場合については除く。これも、扶養している高齢の親の年間の合計所得が38万円以下であることや、その親を確かに養っていること(生計を一にしていること)が条件となる。

この他、納税者が夫と死別あるいは離婚をしたシングルマザーである場合などに適用される寡婦控除、納税者自身が働きながら学生もしている場合には勤労学生控除、納税者や控除対象配偶者、扶養親族が障害者である場合に適用される障害者控除などがある。いずれの控除にも必ず条件があるので、まずはどういう控除があるのかを調べ、自分自身がその条件を満たすかどうかをチェックしてほしい。


子ども手当て、高校無償化で控除額引き上げ

このところの税制改正で所得控除の内容の見直しが進んでいる。扶養控除がそのひとつだ。以前は、扶養控除の対象となる23歳未満の子どもがいれば、誰についても1人あたり38万円からの扶養控除が適用されていた。しかし、子ども手当制度の導入に伴い、2011年から16歳未満の年少扶養家族については扶養控除の対象外となっている。さらに、高校の無償化に伴い、19歳未満の子どもの扶養家族についての控除額が63万円から38万円に引き下げられた。

累積赤字の解消の財源を所得税に求める一方、景気刺激をもしたい政府としては、所得控除の見直しは今後も欠かせないテーマだろう。現在、見直しが検討されている項目は次の通りである。


配偶者控除の見直し

女性の社会進出がもはや当然となり、結婚・出産をしても正社員として働き続けることを選ぶ女性が格段に増えてきたこと、少子高齢化を背景に深刻な労働力不足に見舞われるようになったことを受け、配偶者控除の見直しが検討されている。これと同時に夫婦控除という世帯ごとの所得控除システムの導入について議論がなされているところだ。


低所得者層に対する基礎控除額の引き上げ

昨今、若年層の貧困化が問題視される中での所得控除の見直し案だ。各種人的控除を縮小・廃止するのと同時に、本当に支援を必要とする人々に対してより生活しやすい形での税制を実現しようとするものである。なお、これ以外にも、給付付き税額控除という形での貧困層支援も検討されている。

各種所得控除は、戦後、税制が整えられる中で形成されてきたものだ。「終身雇用の夫、専業主婦の妻、子ども2人」「シングルマザーなら死別か離婚しているはず」といった紋切り型の前提条件で国民を区分できた時代の所得税制である。しかし、21世紀になり、働き方も家庭のあり方も多様化し、もはやこのような前提での税制では対応しきれなくなっている。税の基本原則は「公平・中立・簡素」。だからこそ、時代の流れに則った税制であることが必要だし、折に触れて見直すことも欠かせないのである。

鈴木 まゆ子(すずき まゆこ)税理士
鈴木まゆ子事務所代表。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。ドン・キホーテ勤務中に会計に興味を持ち会計事務所に転職する。妊娠・出産・育児をしながら税理士試験の受験勉強を続け09年に合格。12年に税理士登録。現在、外国人のビザ業務を行う行政書士の夫とともに外国人の決算・申告・コンサルティングに従事。14年から国際相続などを中心に解説記事作成業務を行っている。8歳、5歳、2歳の三姉妹の母。

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