米利上げ、中国減速リスクに身構える世界経済

世界経済は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げと中国経済の減速の不安に覆われている。しかし、本来は、米国の利上げも中国経済の減速も、世界経済にとって必ずしも悪い材料ではないはずだ。

リーマン・ショック後の2008年12月からおよそ7年にわたり続いたFRBのゼロ金利政策の終焉は、世界最大の米国経済が、非常時モードの金融政策を続けることが正当化できないレベルまで回復したことを示す点では好材料だ。

中国は「新常態」という旗印を掲げ、安定成長への移行を目指している。中国は、ドル換算の名目GDPで14年には世界の13.4%を占めるまで存在感を高めている。輸出依存から消費主導の成長への転換は必然であり、製造業中心の資源大量消費型の産業構造からの転換は世界経済にとって好ましい変化だ。

しかし、先行きについて不安が勝るのは、中国の成長鈍化と米利上げが同時進行すれば、新興国に実需と資金繰りの両面からの圧力が強まるおそれがあるからだろう。2000年代初頭まで世界経済に占める新興国のウェイトはドル建てで見ると2割前後で推移してきたが、現在では4割に届こうとしている(図表1)。

その中心は中国であり、世界金融危機後の局面では、米欧の成長が鈍ったことで、中国のプレゼンス向上と米国の相対的な地位低下が進んだ。14年時点で、世界の名目GDPに占めるウェイトは米国が22.5%、欧州も28カ国で構成する人口5億人の単一市場・欧州連合(EU)全体では24.0%で中国を大きく上回る。

それでも、近年、年々の名目GDPの増加額は、中国が恒常的に米欧を上回るようになっている。多くの新興国にとって中国は、米国以上に重要な貿易相手国となっており、米国経済の回復では、中国の減速によるマイナスの影響を吸収できない可能性がある。原油・国際商品価格の値下がり(図表2)は、中国の需要鈍化による供給過剰の懸念を反映している。

米利上げ、中国減速リスクとユーロ圏経済 図1-2