(*1)帝国データバンクの資料では、コンプライアンス違反に該当するものとして「粉飾」、「業法違反」、「談合」、「資金使途不
正」などが例として挙げられている。
(*2)帝国データバンクの資料では、「粉飾」は「不正経理や融通手形などで決済数値を過大(もしくは過小)に見せる」ことと説明している。
(*3)これらのファクターに関する日本の会計基準に対応させた解釈については、「不正会計の早期発見に関する海外調査・報告書」(大城直人,FSAInstituteDiscussionPaperSeries,2014年8月)を参考にした。
(*4)本レポートでは、これらの指標を計算する際に、会計制度の変更、米国基準やIFRSを用いることによる会計差異については補正することなく、データソースにより取得された数値をそのまま用いて計算している。
(*5)粉飾事件事例として指摘されることのあるアイ・エックス・アイやニイウスコーなどがこのサンプルの中に含まれる(ただし、粉飾等が発覚した後に会計数値が修正されている場合は、修正後の財務データを使用している)。一方で、一般的に日本において重要な粉飾事件として取り上げられることの多い山一證券、カネボウ、日興コーディアル証券、ライブドアなどは、この標本抽出方法では倒産企業のサンプルに含まれず分析対象とはならないことに留意されたい。
(*6)現金が回収できないことが確定した場合であっても、遅かれ早かれ貸倒引当金を通じて費用認識されるため、最終的に会計発生高が小さくなる方向に作用することになる。
(*7)日本基準とは異なりUSGAAPやIFRSではのれんの償却は行われないが、減損の可能性は(会計処理に違いはあるものの)同様にある。
(*8)他にも、メインバンク制の変化や株式持合いの解消に伴って債権者や株主との関係に変化が生じたことや昨今の情報社会の発展などにより、2005年以前と比較して2006年以降の企業倒産において、信用力の悪化した企業に対する(資産のリストラ等に対する)猶予期間も短くなっているのかもしれない。
(*9)順序ロジットモデルによるパラメータの推定方法は、「信用リスク評価の数理モデル」(木島正明、小守林克哉著)などを参照されたい。
(*10)「粉飾」による倒産事例として取り上げられることの多いアイ・エックス・アイやニイウスコーもこの方法で検知できてきる。一方で、一般的に「粉飾」による倒産事例に分類されない企業についても、B/S BasedとCF Basedの両方で倒産確率が80%を超えているものがあった。このことは、「粉飾とまでは言えない過度な利益調整」を行っていたと考えられる企業に関しても「信用力が悪化している」ものとして検知されていることを意味しており、この結果から「過度な利益調整は倒産確率を高める」と結論付けられるものと思料される。
(*11)本レポートにおける剰余金には、利益剰余金(内部留保)だけではなく、その他の包括利益累計額も含めた数値を利用している。
(*12)Altmanは米国企業データを用いて判別分析により係数を推定した。よって、日本企業の標本を用いると係数が異なる可能性がある。参考までに、本レポートのサンプルにおいて判別分析で推定した結果は以下のようになった(ここで、「倒産または倒産に向かっている」と判断する基準は「Z<0」とする)。
Z=-0.38+0.62×FF1+2.98×FF2-1.39×FF3+0.43×FF4-0.28×FF5
(*13)Altman Z Scoreとその各ファクターの基本統計量については、図表24~図表26を参照されたい。
(*14)2006年以降の倒産企業のサンプルを見ると、このような「営業利益÷総資産」が倒産する1年前の会計期末に急落した企業は、それまでにAccruals Ratioが正の数かつ高い数値をとり続ける傾向が見られた。そのため「過度の利益調整が行われた」企業であったと判断している。逆に、早い段階から「利業利益÷総資産」の悪化が見られた倒産企業は、Accruals Ratioが負の数になり続ける傾向が強く見られており、2005年以前の倒産企業と同じような特徴を持っているため、従来の信用リスクモデルでも検知可能であったと考えられる。
福本勇樹
ニッセイ基礎研究所 金融研究部
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