中国経済の減速を他国がどこまでカバーできるかに注目

――中国経済の減速の影響は特定のセクター、企業に限定されるということですね。たとえそれが、全体相場の下落を招いたとしても、夏相場と同様に「行き過ぎ」であると考えて良いのでしょうか?

中国の経済統計は悪化することはあっても、V字回復は考えにくい情勢です。IMF(国際通貨基金)やOECD(経済協力開発機構)、世界銀行の予測もさらに下方修正されることも予想されます。そうした状況のなかで、中国経済の減速を他の国でどこまでカバーできるかがポイントとなるでしょう。

スイスの時計輸出のデータを見ると、中国や香港向けは落ち込みが酷くどうにもなりません。しかし、日本や米国、ドイツ向けは順調に伸びており、中国向けの落ち込み分をなんとか帳消しにしています。つまり、世界経済も同じ考え方で、中国の落ち込みを日本や米国、欧州などの国々でカバーできるかが注目されます。先進国に政策発動余地のある現時点で、世界経済が一気に冷え込むと悲観的になるのは時期尚早です。その辺をハラハラしながら見極めていく、現状はそんな局面と考えます。


アベノミクス「経済の秋」

――なるほど。日米欧がどこまで踏ん張れるかが課題となるわけですね。

米国は予想以上に踏ん張っていますよ。若干足を取られそうな場面もありましたが、目下のところ影響は限定的です。米雇用統計が悪いと言っても、平均すれば20万人程度ですから、現時点でそこまで心配する必要はありません。ドル高で輸出が不振なのは事実ですが、ガソリン安で新車販売は過去最高レベルと絶好調です。不景気で新車販売が過去最高レベルというのは、あり得ない話ですよね。少なくとも、米国内で経済がしっかりと回っているのは確かで、今後も中国の影響は限定的と見ることもできます。

欧州も金融緩和等の政策がジワリと効いてきています。難民問題で財政支出をせざるを得なくなって来ている点、VWショックから雇用を如何に守るかにも注目したいですね。 問題は日本です。中国経済の減速は今更な話、外需の伸びを望めない以上、内需で手堅く回す必要があり、まさに「経済の秋」とならなければなりません。日本が頑張れば中国の減速に足を取られることはありません。そのためにも、アベノミクスの再起動がしっかりできるのかどうか注目されます。追加緩和策と補正予算をセットで打ち出すことができれば、マーケットは反転することも十分に考えられます。

航空機でいえば中国というエンジンの故障を、日本や欧米など他のエンジンを目一杯回して墜落を防ぐことは可能ではないでしょうか。


米利上げは「先送り」もリスク

――夏相場で中国と並んで懸念材料となっていたのが、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策です。ただ、こちらに関しても、利上げ観測の後退で市場のセンチメントも夏場と比較して好転していますね。

もともとFRBが6月に利上げをするというのがメインシナリオでしたね。それが、ギリシャ問題で9月に先送りとなり、さらに中国ショックの件で「年内は無理かも?」といった観測が広がりました。そのモラトリアムにマーケットが若干悪乗りしている嫌いがあり、はしゃいだ分の反動安はいずれあるかも知れません。ただ、一時期に比べて悲観ムードが後退していることは確かです。

本当はFRBが利上げできるぐらい、米国経済が安泰な方が理想的といえます。現実問題として、自国の経済情勢だけを見ればFRBも十分利上げできるはずです。個人的には、利上げを先送りすることで、米国経済がかえって過熱する危険性が気掛かりなのと、外部環境任せで時期を特定しずらいことがリスクであり、また為替市場でも円安が進みにくくなっている面もあると思ってます。


年内利上げの可能性は消えたか?

――それにしても、いつものことですが金融政策の変わり目では、マーケットは大きく揺れますね。

バーナンキ・ショックでも経験しましたが、米国の金融政策の変わり目には、何らかのショック安は起こり易いですね。特に1回目の利上げに対しては、神経質になる傾向がありますが、数カ月程度の一時的なもので、大概がいい押し目になっています。連続して利上げしていく中で云えば、「最初の利上げは買い、最期の利上げは売り」でしょう。

年内の利上げが適切だと述べているイエレン氏は、米国経済に対して自信を持っているように見受けられます。新車販売が好調なことは先に述べましたが、そういった良い数字が出揃ってくれば、12月の利上げの現実味を帯びそうですが、現時点では「年内無さそう」の見方が優勢でしょうか。これからクリスマスに向けて、個人消費が盛り上がるシーズンです。『スター・ウォーズ』もあるので、米国経済のフォースが覚醒するかも(笑)。(ZUU online 編集部)

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