道路インフラ投資拡大の好機

◆好機の理由-金利、雇用、資材価格は投資拡大の好機を示唆

財源に問題があるものの、現在は道路インフラ拡大の好機となっている。インフラ投資の投資効率を向上させるには、投資コストを抑制することが重要だが、米国には投資効率を引上げるのに追い風が吹いている。ここでは金利、雇用環境、建設コストについて確認しよう。

まず、金利をみると国債金利、州・地方債金利ともに、11年からは小幅に上昇しているものの、依然として史上最低水準で推移していることが分かる(図表15)。

米国道路インフラ 図15

これらの金利水準には、米国や地方公共団体などの信用状況が影響するものの、低金利の背景は、FRBが08年以降ゼロ金利政策を継続しているほか、物価が落ち着いていることが大きいと思われる。金利水準が低いことは政府による資金調達コストを引き下げることで投資効率の引上げが可能となる。もっとも、FRBはおよそ10年ぶりとなる政策金利の引上げに意欲を示していることから今後上昇が見込まれており、急ぐ必要がある。

さらに、物価は落ち着いていることで道路建設コストも抑制されている。連邦道路管理局(FHA)が公表している道路建設コスト指数の推移をみると、資材コストが落ち着いていることもあり、建設コストは金融危機前の水準を大幅に下回っており、足元は比較的安定した動きとなっている(図表16)。このため、建設コストの観点からも投資拡大し易い環境であると言える。

米国道路インフラ 図16

最後に雇用状況について確認しよう。大統領経済諮問委員会(CEA)は、投入産出表から交通インフラ投資拡大に伴う雇用創出の産業別の影響を試算している。それによれば、雇用拡大の恩恵を受ける産業の比率は、建設業が7割弱と集中しているほか、製造業も1割程度有るとしている(図表17)。

米国の雇用者数の推移をみると、今般の労働市場の改善に伴い、非農業部門雇用者数全体では金融危機前の水準を上回って回復しているものの、建設業の雇用者数は金融危機前の水準を、依然として大幅に下回っている(図表18)。

米国道路インフラ 図17-18

さらに、建設業の失業率は金融危機後の2割超の水準からは低下しているものの、全体の失業率を2%程度上回る状況となっており、建設業の労働市場は逼迫している状況にはなっていない。このため、インフラ投資拡大は建設業の雇用環境を改善させるほか、建設業の労働市場がタイトになっている日本と異なり、公共インフラ投資拡大に伴う労働不足により民間の建設投資に影響がでる環境ではないとみられる。

◆交通インフラ投資拡大の経済効果-財政刺激策の中で公的投資の効果が高い

これまで、米国では道路インフラの劣化が深刻となっており、経済負担が大きくなっていることをみた。さらに、米国がインフラ投資を行うのに金利等の外部環境も良好であることが分かった。

実際、このような環境下でインフラ投資を拡大することによってどのような経済効果が見込まれるかだが、CEAおよびCBOは、金融危機を受けて09年に実施された米国復興・再投資法(BUILDING ON THE AMERICAN RECOVERY AND REINVESTMENT ACT OF 2009)に基づく経済政策の結果を分析して、インフラ投資などの公的投資支出が個人への補助金支給などに比べて経済効果が高いとの試算を示している(図表19)。

米国道路インフラ 図19