高島屋
(写真=PIXTA)

百貨店の人材は採用は従来、新卒が中心だった。社員研修、進級・昇格制度、給与制度などの人事体系全般が、基本は勤務年数や経験度、習熟度と共に上がっていくシンプルな形だった。働く社員もその安定した組織風土の中で育ってきた。

その結果、できあがったシステムの中で人材は同質化。内部の結束力が高まるという意味では「純血主義」もよかったのだが、専門職が足りなくなるといった問題も顕在化し、そこから脱皮しようという動きがある。


新卒採用偏重の歴史とその結果

百貨店は店頭の販売員を中心に採用してきた。店頭と一言で言っても、“百貨”の言葉通り、扱っている商品は多種多様だ。日用品から高級品まで習熟にかかる年数は非常にバラつきがあるが、特に専門知識の必要な美術工芸品や宝飾品、高級ブランド、オーダー服、インテリア設計などを担当する販売員、そして上得意先担当の外商などは新卒時から年数をかけじっくり育ててきた歴史がある。

右肩上がりで経済成長していた時代は新卒を定数採用を続けて行けば、先輩が後輩にOJTすればよかったのだが、低成長で不況が続き、人員削減を余儀なくされる中で、専門職の人材補強や後継者育成をできなくなってきた。

また専門職の高齢化と定年延長も期限切れとなって退職が進んできた。現状、人材採用と育成の問題を考え直さなければならなくなっているのだ。


中途採用に注力し始めた「高島屋」の挑戦

高島屋はここ数年、中途採用をハッキリと前面に打ち出した。高島屋の直近の年間新卒採用目標は約50人だが、通年で新卒と同数の中途採用を行っている。

同社にはもともと採用面でも優位性がある。新卒の企業人気ランキングは、常にトップを維持している。他の百貨店の主力店舗が関東、関西のどちらかに偏っているのに対して、高島屋は東西にバランスよく主力店舗を持っており、全国レベルで影響力があることがうかがえる。その高島屋が口火を切った意味は大きく、成果いかんによっては、他百貨店に影響する可能性が高い。

中途採用の大きな意味は、採用が通年になるということである。日本的新卒採用が今後、通用するかどうかが問われる中で、前段の百貨店の専門職育成に新たなエポックを作ろうとしているのが伺える。求人職種を見るとやはり前述の専門職が中心だ。しかも、大型都心店に限らず地方店にも広げている。

他社を見てみると、阪急阪神百貨店も「若干名」とはいえ、専門職の中途採用をオープンにしている。スポット採用的な意味合いもあるが、関西の雄、阪急阪神百貨店に動きがあるというのも大きい。他百貨店は表面化していないが、表立っての募集がないだけで縁故的紹介の中途採用はよくある。