ウォール街
(写真=Thinkstock/Getty Images)


アクティビスト投資家ネルソン・ペルツ氏

近頃、ウォール街でひとりの投資家が注目を集めている。その名は、ネルソン・ペルツ氏。投資会社トライアン・ファンド・マネジメントを率いるアクティビストだ。アクティビストとは、株式を一定以上取得し、投資先企業の経営陣に積極的に提言を行うことで、企業価値向上を目指す投資家のことである。

よって、友好的な提言だけでなく、株主提案権の行使や、会社提案議案の否決を目的とした委任状争奪戦なども行う。日本でも、かつて「村上ファンド」と呼ばれ、村上世彰氏が率いたM&Aコンサルティングが近い存在として知られるところだ。今回は上場企業とアクティビストの関係について、ウォール街の事例をもとに考察したい。


アクティビストには2つのタイプがある

村上ファンドは、東京スタイルやニッポン放送 、阪神電気鉄道の株を買い、内部留保を使った自社株買いを行うことを株主提案権行使請求書として提出するなど「物言う株主」とも呼ばれた。ネルソン・ペルツ氏もまた、デュポンなどの株式を買い、委任状争奪戦を仕掛けた経緯がある。この点だけに着目すれば、ペルツ氏はハゲタカ投資家というような印象を与えてしまうかも知れない。しかし、実のところ、アクティビストには2種類のタイプが存在する。

つまり、①過去に日本でスティールパートナーズがサッポロホールディングスやブルドックソースの株式を取得し、全株式取得を目標としたTOB(株式公開買い付け)を行うと発表するなどしたように、経営層に圧力をかけ、比較的短期間に利益を求めるもの、②プライベート・エクイティファンドに近く、長期的な企業価値向上を目的として行うものであり、どちらかと言えば、ペルツ氏は後者のタイプである。


デュポンとの委任状争奪を巡る戦いとGE株取得

ペルツ氏は、かつては食品・飲料業界の株式取得に動くことが多く、過去にはクラフトフーズの大株主となりキャドバリー社の買収や、クラフトフーズとモンデリーズ社の分離を主導した。しかしながら、デュポンの株式取得においては、激しい委任状争奪戦を仕掛けた。

デュポンのクルマン前CEOは、自動車塗装・化学事業売却や食材メーカーダニスコの買収などの改革を進め、2009年1月のCEO就任以降、株価も上昇していたものの、ペルツ氏から業績が振るわない企業と評され、大胆なコスト削減と会社分割計画を実行するため、取締役会に取締役4人の選任を要求される事態となった。最終的にはデュポン側が勝利したものの、アクティビストが牙をむいた瞬間だったといえるだろう。

一方、ベルツ氏が25億ドル相当の株式(発行済み株式総数の約1%)を取得した、米巨大企業GE(ゼネラル・エレクトリック)のケースでは、対立関係には至っていない。実際、金融部門の大半の売却など、企業価値向上へ向けた経営方針について、両者の基本的な見解は一致しており、取締役の派遣要求などもされていない。GEのジェフ・イメルトCEOも「トライアンの投資を歓迎する。オープンに議論していきたい」と述べるなど、ベルツ氏を尊重する姿勢を見せている。