申告漏れ時に加算税等が上乗せされる
ここまで面倒になるのなら「財産及び債務の明細書」のときのように未提出で済ませようと考える人も出てくるかもしれないが、「財産債務調書」には冒頭で示したように罰則がある。
具体的な罰則は、財産債務調書が未提出または提出した財産債務調書に記載がない財産や債務について所得税の申告漏れが生じた場合に発生する。過少申告加算税や無申告加算税、重加算税といった加算税等に、更に5%が上乗せされる。逆に、財産債務調書に記載がある財産や債務について所得税や相続税の申告漏れが生じた場合は、加算税等が5%軽減される。
未提出はダブルで危険!
今回のポイントは3つである。まず提出対象者について、所得2000万円以上で財産が3億円以上または有価証券等が1億円以上であること。次に、財産と債務のカテゴリ毎に内訳を記載するとともに、カテゴリ毎の合計額を記載した「財産債務調書合計表」も作成と提出が必要であること。
そして、提出をすれば万が一申告漏れがあってもペナルティが5%軽減され、提出しなければペナルティが5%上乗せされることだ。財産債務調書の提出がなければ税務署の心証も悪くなり、悪気がなくても目をつけられてしまうかもしれないという意味で、5%の加算税上乗せと併せてダブルでリスクを負う。財産債務調書提出の要件に該当する方は当法改正を正しく認識し、忘れず対応して頂きたい。
新井 良平 経理ライター
中小企業から上場企業まで規模を問わず経理や税務を経験。日々の経理処理から開示業務、IFRS、内部統制、経営分析、税務申告、移転価格など幅広い経験を基に複数メディアで記事を執筆。