2015年度の税制改正で、2016年3月15日期限の確定申告から高所得者は“あるもの”を提出しなければいけなくなったことはご存知だろうか。“あるもの”とは「財産債務調書」のことで、提出しなければ課税額が5%上乗せされる。一方で、期限までに提出すれば万が一申告漏れがあってもペナルティが5%軽減されるという優遇策も設けられている。

税務当局が納税者の提出意欲を引き出し、所得税や相続税の徴収漏れを防ごうとしている意向が見てとれる。この「財産債務調書」の内容、従来との違いなどを見ていこう。

従来より対象者のハードルが上がった

従来は年間所得が2000万円を超える場合に「財産及び債務の明細書」の提出が必要だった。

「財産債務調書」と「財産及び債務の明細書」との大きな違いの一つは提出すべき対象者にある。従来の「財産及び債務の明細書」は、年間所得2000万円以上の人が対象だったが、今後、明細の提出が必要であるのは次の2つを両方とも満たす人だ。

  • 給与や事業収入等の合計である年間総所得が2000万円超
  • その年の12月31日時点で財産を3億円以上、または国外転出特例対象財産(株式や投資信託、先物取引、オプション取引等)を1億円以上保有

所得が2000万円を超えていても、財産が3億円未満または有価証券等が1億円未満であれば対象外となる。同様に、財産が3億円以上又は有価証券等が1億円以上であっても、所得が2000万円以下であれば対象外である。従来よりハードルが上がり、対象者が絞られたと言えよう。

時価に直す必要があるのが厄介

財産債務調書の内容を見てみよう。財産債務調書は12月31日時点で保有している財産と債務の明細を記載して提出するものである。

財産のカテゴリは、土地、建物、山林、現金、預貯金、有価証券(上場株式、非上場株式、その他)、貸付金、美術品、貴金属等である。債務のカテゴリは、借入金、未払金、その他となっている。これらカテゴリの内訳明細として、例えば預貯金は金融機関の支店毎に、株式は銘柄毎に、財産の金額や所在地を記載することになる。また、カテゴリ毎の合計金額をまとめた「財産債務調書合計表」も作成し併せて提出が必要だ。

厄介なのは、それぞれの財産を「時価に直す必要がある」ことだ。不動産は固定資産税評価額があればいいが、国外財産等の場合は別途見積もりが必要である。株式も上場していれば取引所の株価を使用すればいいが、非上場であれば直近の決算書を基にした算定等の手間が必要となる。財産債務調書の提出までに財産を売却した場合は、その売却金額を使うこともできるようである。

なお、国外に5000万円を超える財産を保有している場合に提出する「国外財産調書」に記載した財産は記載の必要はない。