新華社の描くバラ色の夢物語

今後の見通しについて全国レベルの分析記事(国営新華社配信)に目を通してみよう。

それによると、政策発効以降、人口は穏やかに増加していき、第14期5カ年計画(2021〜2025年)の時期、一旦緩やかに下降するものの、再び上昇し2029年〜30年にピーク(最高峰)の14億5000万人となる。

その後、人口の安定均衡を保つ出生率1,8前後で落ち着く。その間、人口構成は「優化」し高齢化圧力が減少、極端に拡がってしまった男女比(男119〜121に対し女100)も正常値(男103〜107)に向かう。

労働力不足も解消され、経済発展にも大きな寄与が見込まれる。とバラ色の未来図を描いている。ただし根拠らしきものは一切示されておらず、これでは分析とは名ばかりで単なる夢物語すぎない。


2人目つくる夫婦は本当に増えるのか?

実際の傾向はすでに明らかになりつつある。先述の某市における今年1〜8月までの出生数は、第一子が2万3724人、第二子が1万8216人で、トータルの自然増加率は4,2%だった。

一人っ子両親同士の「単独二孩」は同市では2014年5月から実施されたが、その年の増加率5.0%を下回っている。2014年の当局予想は5.4%だった。15年予想は発表されていないが、明らかにスタートからつまずいている。

今後当局の達成すべき責任目標は7,2%とあるが、果たして達成できるかどうか。開放効果によって再来年が増加率ピーク(小高峰)と予想されている。問題はその後だ。2030年の最高峰は本当に来るのだろうか。

新浪網によるネットアンケート(参加者10万2951人)がある。2人目を生む31.2%、生まない39.6%、情況を見て決める29.3%という結果だった。景気が悪化し、収入の伸びが鈍化すれば、情況を見ている人たちは、生まないだろう。

また都市部では一人っ子にお金をかけまくる文化が定着してしまった。同じく同市の行った夏休みアンケート調査では、子供に5000元以上消費したという回答が半数を超えた。5000元から1万元が38%を占めている。思い切り子供に注ぎ込んでいることが分かる。高級車で学校に送迎することにも情熱を注いでいる。

こうした世相を見ていると、そう簡単に2人目を決断しそうに思えない。また結婚の経済的なハードルが高まり晩婚化もますます進んでいく。考慮すべき変数はいくらでもある。最高峰がやってくる保証はどこにもない。

ともあれ、一人っ子政策廃止は“明るいニュース”には違いなかった。もともと国家への期待も依存も薄い中国人だが、少しの間くらい、新華社の言う夢物語に酔って見るのもいいだろう、くらいが一般的な感覚のようである。(高野悠介、中国在住の貿易コンサルタント)

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