有能な人的資源の保有・活用
生保事業は、人の保障・貯蓄・投資ニーズに応えるサービスを、人(販売者)が提供するという性格を有するビジネスであり、生保各社は有能で信頼される人材の育成・活用に注力している(リーダー教育プログラムや、優秀な新規人材を採用し計画的に業務・各地拠点勤務経験を積ませて幹部に育成するプログラム等)。
3社のアジア地域本部の幹部の多くは、自社や業界の競合有力社、アジア地域内を含めた海外の複数の場所で、経験を積んだものが多い。特に、経営トップ層や、戦略や販売・マーケティングの人材に、その傾向が強い。また、第三国籍者で有力企業の複数国の拠点をまたがる転職事例も多い。同時に3社はアジア地域における他の保険企業への高度人材の供給源にもなっている。
この点に関し、AIAは、「自社および競合他社で勤務した人材が有する経験のコンビネーションが、同社の事業戦略を推進しアジア市場における変化に迅速に対応できる広範な視点を与えてくれる」として、異文化の受容・活用を積極的にとらえている。また、プルデンシャルも「有能な人材を採用し自社に統合できることは他社が容易には追随できない大きな競争優位である」と述べている。
3社は、アジアにおける長い歴史と社名・ブランドの認知の高さ、事業規模の大きさ(スケール)により、競合社に比べて、有能な人材を採用しやすい有利な環境にあるとも考えられる。さらに、人材の自社グループ内の拠点間の異動を積極的に行い、能力向上や経験・ノウハウの共有化に努めている。
上記で述べた人的資源を巡る状況は、欧米や日本など先進地域に比べ相対的に生保事業の歴史が浅く有能な人材プールが少ないアジアの現状において必要とする人材の育成・確保を行うための取組みのあり方やその発展段階を示している。
今後、市場の発展に伴い経営の現地化が進む中では、各社ともにリーダー教育に注力している成果が現れ、より多くのポストがアジア人材によって担われることになるものと推量される。