ブランド体験の一貫性、デジタル体験を実体験につなげる

いつでも、どこでも同じブランドを体験してもらうことは、ブランドビジネスにとっては非常に重要だ。これはファッション業界に限らず、「ブランド」を売りにしている事業に共通した課題だ。

バーバリーのサイトはすべて本社でコントロールされており、現在11言語に対応し、世界46カ国で統一した同じプラットフォームで同時に展開している。商品構成も全世界共通となっており、インターナショナルで展開されている商品がすべて購入可能だ。また最新のコレクションや世界中の都市で開催されたショーやイベントが動画で視聴可能だ。

バーバリーが2010年に実施した「Runway to Reality」というプロジェクトでは、ファッションショーをオンラインメディアを通じてライブストリーミングを行いながら、そのショーで披露されている商品をその場でオンラインで購入できる仕組みを構築した。

また通常ショーで発表された商品は顧客が手にできるまでに6カ月あまりの時間が必要だったものを、約7週間で発送できる生産・発送システムを構築している。

これはラグジュアリーブランドとしては画期的だ。同様の取り組みは日本のTokyo Girls Collection でも行われているが、こちらは低価格・量産のマスブランドである点が、ラグジュアリーブランドとの大きな違いだ。

このようなデジタルでのブランド体験の核となるのがburberry.comだ。このサイトはブランドサイトとオンラインショップを兼ねており、コレクションやルックブックなど、ブランドのすべてをburberry.com上で体験することができる。

特にオンラインショップは驚くべき対応力で、オンラインで購入したアイテムは配送でも実店舗でも受け取ることができ、モノグラムを入れるカスタマイズサービスにも対応している。ラグジュアリーブランドとしてはこのような仕組みの構築はいまだに先頭を走っていると言っていい。


コントロールできないSNSを取り込むという挑戦

またショーはSNSで同時に拡散されるよう、Facebook、Twitterのアカウントを通じて、世界中の視聴者がリアルタイムでコメントを投稿できるようにした。ラグジュアリーブランドにとって、最も重要なブランドコントロールができないSNSを組み込むことは非常にリスキーだと考えられるが、そのリスクに対して大きなリターンを得ており、この流れは他のブランドにも波及している。

Facebookの「いいね!」数約1700万人、Twitterのフォロワー数は500万人を超え、ヴィトンなど他のブランドInstagramでも530万人のフォロワーがいる。バーバリーにとってのSNSは情報拡散というよりも、自身のブランド・コミュニケーションのシステムに取り込んでいるかのようだ。