(写真=Thinkstock/Getty Images)
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民間投資が国内民間貯蓄を上回り、財政支出が大きく財政赤字であれば、国際経常赤字となる。そのような状態が続けば、政府のネット債務残高(GDP比)が上昇するとともに、海外からの借り入れも大きくなり、対外ネット債務残高(GDP比)も上昇していく。

一方、国内経済が成熟化し、国内貯蓄が潤沢で、投資需要が小さければ、国際経常黒字が継続し、海外への貸付が大きくなり、対外ネット債務残高(GDP比)は低下する、または対外純資産(GDP比)が上昇する。

もし、国内の投資需要と海外からの資金需要の合計が国内貯蓄より小さければ、国内の所得はそれが釣り合うところまで減少してしまうことになる。その足りない分だけ、財政支出が増加すれば、国内の所得を維持することができる。

裏を返せば、そのような状態であれば、市場経済に失敗の是正、長期的なインフラ整備、教育への投資、貧富の格差の是正、社会保障の充実などを目的とした、財政支出の増加の余裕があるということになある。そうなれば、対外純資産(GDP比)が上昇するとともに、政府のネット債務残高(GDP比)もしていくことになる。

横軸に対外純資産(GDP比)をとり、縦軸に政府のネット債務残高(GDP比)をとれば、スマイル(U字型)になると考えられる。実際に、多くに国々を集めて、グラフをつくってみると、しっかりとしたスマイルが確認できる。

左の方は、対外ネット債務残高(GDP比)が大きく、政府のネット債務残高(GDP比)も大きい国々となる。一方、右の方は、対外純資産(GDP比)が大きく、政府のネット債務残高(GDP比)が大きい国々となる。真ん中あたりは、両者がバランスしている国々となる。

政府のネット債務残高(GDP比)を安定させるための政策は、左の方にいるのか右の方にいるのかで大きく違うはずだ。左の方は、財政支出が超過であり、増税・歳出削減などの緊縮財政により、ネット債務残高(GDP比)を安定化させることが得策だ。

一方、右の方は、民間支出が不足しており、民間投資を促す規制緩和や政府支出、需要を喚起する減税などの政策で、リフレ政策によって名目GDPを拡大することにより、政府のネット債務残高(GDP比)を安定化させることが得策だ。

財政を会計・ミクロだけで考えると左の方しか理解できないが、マクロで考えると右の方も理解でき、会計の帳尻合わせでは財政を改善させることはできない。

日本は、対外純資産(GDP比)が大きく、政府のネット債務残高(GDP比)が大きい、右の方の極にいる。現在、日本の財政収支は急激に改善しており、緊縮財政ではなくリフレ政策によって民間需要を喚起し財政を改善させるアベノミクスの方向性は正しいと考える。

左の方にいる支出が過多な国々(ギリシャなど)の処方箋である緊縮財政を追求しすぎ、民間需要が萎縮してしまい、更に財政が悪化してしまったのが、これまでの日本の姿だろう。

スマイルが確認できることは、効果的な処方箋は財政改善=緊縮だけではなく、また間違った処方箋では悪化してしまうことを認識しなければいけない。財政を会計・ミクロだけで考えると左の方しか理解できないが、マクロで考えると左の方も理解でき、会計の帳尻合わせでは財政を改善させることはできない。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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