(写真=PIXTA)
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東京都渋谷区は2015年10月28日、同性のカップルを結婚に相当とする「パートナーシップ」を認めるパートナー証明書の申請受付を開始した。世田谷区でも2015年11月5日から同性カップルのパートナーシップ宣誓書の受付を始めている。兵庫県宝塚市も2016年6月をメドに同性カップルから名前や住所を記した「パートナーシップ宣誓書」の提出を受けると、市長名で「受領証」を交付する制度を開始すると発表した。

渋谷区の条例では、住居の賃貸契約や病院の面会時の戸籍上の家族でないことを理由に断るなどした場合は、区が是正勧告をした上で事業者名などを公表するなどの効力がある。こうした制度が開始している中、気になるのは同性カップルの相続対策。従前の相続対策をみていきながら、同性カップルの相続対策について考えていきたい。

相続対策の基本の考え方

相続とは、亡くなった人(被相続人)の財産は法定相続人に継承される。法定相続人とは、戸籍上の配偶者や子、孫、ひ孫、父母、祖父母、曽祖父母、兄弟姉妹と定められている。相続の対象となる財産は法定相続人に定められた割合分が継承され、相続された額により相続税の対象となる。相続問題によくみられるのが、相続分の相続税の資金がなく納税できず、相続を放棄するケースもある。そこで、生前から相続対策について考える必要がある。

まずは相続税における「課税価格」があるのかをおさえておこう。亡くなった日の資産から負債を差し引いた額を相続税法では「課税価格」という。「課税価格」はすべてを相続税の対象とはせず、遺産に係る基礎控除などがあり、基礎控除などをふまえ相続税額がどれぐらいなのか計算でき、“納税対策”を練ることができる。

財産の種類は宅地・家屋・預貯金・株式、投資信託・生命保険金・生命保険契約に関する権利(解約返戻金)・死亡退職金・ゴルフ会員権などがある。

遺言書の作成では「遺留分」に気をつけたい

遺言書を作成することで、どの財産を誰にどれだけ継がせるかなど遺産の分割について書き記すことができる。

法手相続人以外に相続をさせたい場合でも遺言書を作成することで、効力がある。遺産分割には、遺言による指定分割と協議分割があるが、法律上、指定分割が優先されているので、本人の意思が反映される遺産分割ができる。

ただし遺言書を作成する際には「遺留分」に気をつけたい。法定相続人以外に全財産を相続させたくても、戸籍上の配偶者、子、父母などの直系尊属は遺留分を有する。兄弟姉妹については遺留分がない。

例えば子がいない場合、妻が全財産を相続できるのではなく、夫に兄弟姉妹がいれば相続割合は妻が3/4、兄弟姉妹が1/4となるが、遺言書で「妻に全財産を相続させる」としておけば、兄弟姉妹には遺留分がないので、遺言書に基づき妻が全財産を相続できることになる。

同性カップルは「遺言書の作成」を

相続の法定相続人は戸籍上の配偶者と定められているため、同性カップルのパートナーは法定相続人にはならない。しかし同性パートナーに相続したい場合には、遺言書を作成してほしい。

遺言書を作成しておけば、法定相続人以外にも財産を残すことが可能となるので、同性カップルのパートナーに財産を残すことができる。仮に亡くなったパートナーの法定相続人が兄弟姉妹のみの場合に「全財産をパートナーに残す」と遺言書を作成すれば、兄弟姉妹には遺留分がないため、全財産をパートナーに残すことができる。

遺言の作成方法は「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類が一般的ではあり、それぞれの作成方法には短所がある。「自筆証書遺言」の場合、紛失や改ざんの恐れがあり、「秘密証書遺言」においては遺言書の内容が公証されていないため、内容に不備があれば無効になる可能性がある。作成する際に手数料がかかり、作成手続きが煩雑ではあるが公証人が作成するため、内容が確実な「公正証書遺言」で作成しておくと安心である。

生命保険会社でも「同性パートナー」に対する取り組みが始まっている。これまで保険金の受取人は戸籍上の配偶者とされていたが、同性パートナーを受取人に指定できる生命保険会社が出てきた。

また「同性パートナーシップ証明書」を提出することで生命保険の保険金の受取人に指定できる手続きが簡易化される保険会社もある。保険金は相続税の「納税対策」にも活用できるため、保険金受取人に指定できるようになったことは、残されたパートナーの生活保障を準備できるのはもちろんのこと、相続税がかかった場合の納税資金として準備してあげることもできる。今後も同性カップルに対しての法的な権利が広がることを願いつつ、注目していきたい。

今関 倫子 ファイナンシャル・プランナー (AFP)
外資系保険会社勤務中にファイナンシャル・プランナー(FP)を目指し、AFP(日本FP協会認定)資格取得後、独立系FP事務所に転職。女性を中心に年間のべ200件以上のマネー相談を受け、多くの経験を経て独立。個人マネー相談、執筆、マネーセミナーを中心に活動中。 FP Cafe 登録FP。

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