30代ファミリーからの相談で多いのは、家計のやりくりについてである。毎月の固定費である光熱費や通信費、保険に注目している方は多いが、意外とかけすぎている金額が多いにもかかわらず見過ごしているのが「教育費」だ。「子供の教育費には糸目を付けず、やりたいことをやらせてあげたい」——それが親心であろう。
しかし、それが家計を圧迫している要因の一つになっていることになかなか気がつかないことも少なくない。そこで、今回は30代にありがちな家計の落とし穴について見ていきたい。
教育費は「家計のブラックホール」?
教育費はいくらでもかけることができてしまう、いわば「家計のブラックホール」といわれている。
中でも最近、子供がいる多くの家庭で家計費に占める割合が多くなってきているのが「習い事」。自分のできなかったこと、してみたかったのにできなかったこと、それを自分の子供にはさせてやりたいといろいろな習い事をさせているケースもある。
また子供自らやりたいと言い出した習い事をやらせてやるのが親の甲斐性だなどと考え、実際の懐事情に見合わない何種類もの習い事をさせているケースもある。
人気のある習い事は、小学生のスポーツでは1位がスイミング(35.5%)で、3人に1人が行っている。
習い事によっても費用の差は大きく、スイミングなら1カ月平均6400円程度である。一方、クラシックバレエは1カ平均1万1600円。その他、発表会のたびに衣装代や参加費など、数万円単位での出費があるという。
習い事(学校外教育活動)にかかる費用の平均は、小1 1万1900円→小2 1万3100円→小3 1万5000円→小4 1万7400円→小5 1万9500円→小6 2万700円と、学年が上がるにつれ増加する傾向にある(ベネッセ教育研究開発センター『子どものスポーツ・芸術・学習活動データブック』2013より。ちなみに同じ調査は2009年にも発表されているが、習い事の費用平均はいずれの学年も09年のほうが高かった)。
内訳をみると低学年のうちはスポーツ系の習い事が多いのに対し、高学年になると学習系の習い事にうつっていくようである。習い事の変化とともに支出額も多くなっていく傾向に。いわば低学年のうちが将来の学資のため時ともいえる。
習い事の「リストラ」も必要
どんな習い事を、どれだけやるかで金額は大きく変わるが、、習い事や塾代という教育費は家計でも大きな割合を占める固定費。毎月のやりくりをどうしたらよいかというご相談が多い中で、習い事の見極め、「リストラ」も大切な家計の見直しの一つの方法である。
筆者の子供の同級生の中には、週に6件もの習い事に通い、放課後のスケジュールがびっしりで公園遊びもままならない子もいる。それがいい悪いということは一概にいえないが、必要性を見極め、子供自身の意志も尊重し家計の支出バランスもふまえながら考えていきたい。
公共の体育館やプールで行われているスポーツ教室や英語教室などは格安なことが多い。一部代替させてかなりの固定費カットにつながったケースもある。広報誌や公共機関のホームページなどをチェックして、探してみることをおすすめしたい。
公立か私立かでも異なる教育費
教育費のご相談で多いのが子供の進学先を「私立」にしようか迷っているということである。文部科学省の「平成26年 子どもの学習費調査」によると、年間の学費は、公立の幼稚園で22万2264円、小学校で37万1708円、中学で48万1841円、高校で40万9979円合計148万7792円となっているが、私立になると幼稚園で49万8008円、小学校で153万5789円、中学で133万8623円、高校で99万5295円合計436万7715円。
オール公立とオール私立の差は、実に「288万1923円」となる。すでに私立にかよっているご家庭はおいそれと学校を変えるわけにはいかないが、今後の教育費を考えていく上では公立にするか私立にするかは慎重に決める必要がある。
子供が小さいうちが教育費の貯め時
子供が小さい頃の教育費は、給食費や習い事程度で済むことが多く、多額の出費が控えている大学資金を貯める絶好のタイミングでもある。この時期に無理をして多くの教育費をかけ、いざ大学となった時に資金不足になり、奨学金をかりなければならなくなるのは本末転倒だ。
就職したばかりで月数万の奨学金返済はかなり大変だ。若いうちに結婚して夫婦どちらも奨学金返済が残っているケースでは、毎月のやりくりが大変で住宅購入にもなかなか踏み切れないということもある。
教育費にはいとめをつけずというのが親心だとは思うが、習い事には月々の支出に上限をつけて長期的なライフプランをふまえて考えていくことが必要だ。
稲村優貴子 ファイナンシャルプランナー(CFPR)、心理カウンセラー
大手損害保険会社に事務職で入社後、お客様に直接会って人生にかかわるお金のサポートをする仕事がしたいとの想いから2002年にFP資格を取得し、独立。現在FP For You代表として相談・講演・執筆業務を行い、テレビ・新聞・雑誌などのメディアでも活躍中。
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登録FP。
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