(写真=Thinkstock/Getty Images)
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ダイエーの創業者・中内功氏はかつて「売上げはすべてを癒す」と言ったという。その言葉に象徴されるように、販売量の拡大と売上の最大化を目指すのがトレンドが主流とされてきた。他方で、国内市場の低成長時代に入り、大きな流れも変わりつつあるようだ。

実際に昨年、為替も円安水準で継続していたこともあいまって、企業の業績も伸びてきていた背景もある。その理由の一つとして注目されるのが、企業の新興市場での価格設定、あるいは値付け方針の「収益重視」への転換だ。

シェア重視から「収益重視」へ転換した価格戦略

価格戦略そのものの前に、生産性について少し見ておこう。日本生産性本部が昨年末に公表した「日本の生産性の動向2015年版」によれば、日本の実質労働生産性はマイナス1.6%で前年度から2.8%ポイント低下し、5年ぶりのマイナス。労働生産性の改善の必要性も以前から指摘されているものの、日系各社は生産性向上の必要性に直面していた。

それだけではなく、日系企業自身は併せて、価格戦略の転換も進めており、販売戦略の側面からも体質の改善も推進。「右肩上がり」「追いつけ追い越せ」の時代に広まったシェアの獲得と売上の拡大を至上命題とする取り組みではなく、財務体質など経営の視点からの販売価格の、より良いあり方を模索しているのかもしれない。

ブルームバーグのエコノミスト・増島氏によれば、日系企業の価格戦略が、従来はシェアの獲得などを重視して値付けをしていたところから、利益をきちんと確保するための値付けに変わってきていると指摘。単純なシェア獲得競争を拡大に向かうのではなく、利益を出すために価格の設定を図るのは、より健全な姿勢ともみられそうだ。

国内でも進む、利益確保へのシフト

「利益重視の価格設定」と言われても、ピンとこないかもしれないが、小売り一般や物流には、象徴的な事例も浮かぶ。その一つがセブンイレブン・ジャパンのプライベートブランド(PB)の推進による、高品質・高価格路線の強化だろう。

同社では2011年に「目指すのは『ちょっとした贅沢』」をコンセプトとするPB商品、セブンゴールドの販売を開始。「金のハンバーグ」からスタートし、現在では26品目をPBとして提供しており、ゴールドの下のカテゴリーもセブンプレミアムも同社が推進している。その他の商品や他のコンビニと差別化することで、値下げ競争に巻き込まれるリスクを回避しているとの見方も成立しそうだ。

さらに、ファッションブランド「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング <9983> も2006年にセカンドブランドのジーユー(GU)を立ち上げて以来、ファーストブランドのユニクロで販売する商品の高品質・高価格化を推進している。ユニクロの事業戦略ではトップに「素材、品質、機能性にこだわった独自商品を開発」を掲げているほか、「高品質で低価格の商品」の提供とビジネスモデルの特徴を説明し、品質最重視の姿勢を鮮明にしている。

一方、ジーユーについては、「ファッショナブルで低価格なアパレルを展開しているブランド」と紹介しており、基幹事業のユニクロは高品質(および高価格)に重点を置きそれで離れる顧客はジーユーで取り込む戦略を描いているようにも見受けられる。価格設定の方針をどのように進めていくのか、今後の趨勢にも注目する必要がありそうだ。

高収益体質へは「生産性向上」の課題も


また、セブンイレブンやファストリのように、高収益化のために求められるのは、「生産性の向上」だ。データでもすでに明らかになっており、2014年の日本の1人当り労働生産は約768万円で、OECD加盟34カ国の中で第21位と低迷していた。しかも、2005年から第21位が続いており、低い生産性が慢性化してきている経緯がある。

政府は2016年度予算のポイントとして、「経済再生と財政健全化の両立する予算」を標榜。投資促進・生産性革命予算として、「IoTやロボット、人工知能の技術開 発や実証等の支援」、「先端的な省エネ設備や省エネ住 宅等の導入支援」などを挙げており、同課題に取り組むスタンスを示している。

2010年代初期の日本の全要素生産性上昇率はプラス0.8%とOECD主要19カ国の中でも4位につけており、今後の取り組みに期待がかかる。ちなみに、他のOECD諸国の上昇率は、韓国(プラス1.6%)、オーストラリア(プラス1.0%)、ドイツ(プラス0.9%)に次ぐ第4位で、フランス(プラス0.5%)、米国(プラス0.3%)となっており、政府予算の有効活用を含めて、生産性の改善が実現するよう期待したい。(ZUU online 編集部)

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