先行きは原油価格急落の影響、中国経済を巡る懸念が重石

先行き判断DIは48.2と前月から横ばいとなった。参考系列として公表されている季節調整値は51.1と前月から▲0.3ポイント悪化した。先行き判断DIの内訳をみると、家計動向関連が前月差▲0.7ポイント、企業動向関連が同+0.8ポイント、雇用関連が同+3.0ポイントとなった。

景気ウォッチャー調査4

雇用関連(55.2)が高水準を維持する一方で、家計動向関連(47.2)、企業動向関連(48.2)が依然節目の50を下回るなど、中国経済の動向やテロ事件といった海外情勢への懸念の高まりを受けて、景気の先行きに対して慎重な姿勢が優勢となっている。

家計動向関連は、「入学、卒業シーズンに入るので専門店の商品を買う客がいくらか増える」(九州・商店街)や「セールに期待しているほか、春物の立ち上げも意識的に早めていく」(近畿・百貨店)など、卒業・就職シーズンやクリアランスセールの消費押し上げを期待するコメントが見受けられた。

その一方で、「年末でボーナスが出たのか、来客数は増加したが、ボーナスの効果がなくなると、また減少する」(近畿・一般レストラン)といったように、ボーナス商戦の反動の影響を危惧するコメントや、「米国の利上げや原油価格の低下、新興国経済の減速など、景気に対する不透明感が大きく、客の消費マインドが上がらないと予想される」(近畿・スーパー)など、中国をはじめとする新興国経済の動向や原油価格の急落を危惧するコメントが目立った。

企業動向関連は、「景気が良くなる理由が見当たらない。海外にはテロ、中国経済の減速や米国利上げの影響等、不安要素が多く、何かのきっかけで国内景気が落ち込むことを警戒する人が多いと感じる」(東海・化学工業)といったコメントからも、企業は海外景気への警戒感を強めていることが窺える。

これまで原油価格の下落を好感するコメントが一部の業種で散見されていたが、最近では「円安や原油安は、製造業にとってはプラスに働くと考えているが、単純な話ではなさそうである」といったように、原油安の影響を不安視する声が上がっている。

雇用関連は、「来年度に向けて、採用枠の拡大を検討する企業が増えてきていると感じる」(東海・人材派遣会社)など、来年度も引続き雇用の拡大を見込むコメントが多く見受けられた。

個人消費の低迷が続くなか、訪日外国人客による観光需要などが景況感の下支えとなっているものの、中国経済の動向など海外情勢の不透明感もあり、景況感は足踏み状態が続いている。

また、個人消費は名目賃金の持ち直し、物価上昇率の低下による実質所得の押し上げなどから回復しているものの、そのペースは緩やかに留まっており、景況感を押し上げるまでには至っていない。

2016年に入ってから中国の景気減速に対する懸念が再浮上したことに加え、サウジアラビアによるイランとの外交関係断絶や北朝鮮による核実験といった地政学リスクの高まりを受けて株安・円高が進行している。

こうした状況が続けば企業マインドの悪化だけでなく、消費者心理を冷やしかねない。新たな押し上げ材料が不在のなか、相次ぐ不安材料が下押し要因となることから、次回調査では景況感の悪化は避けられないだろう。

景気ウォッチャー調査5

岡圭佑
ニッセイ基礎研究所 経済研究部

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