手数料 (写真=PIXTA)


ネット証券の最大の魅力は手数料の安さだ。しかし、それは取扱商品、サポート体制、リスク管理面などのサービス提供を最低限にとどめることで成り立っている。LCC(格安航空会社)が様々なサービスを廃止することで低価格の航空チケット販売を実現していることと同じだ。

当然、ネット証券のサービス内容も一律ではなく、各社の特徴が表れている。単に手数料が安いという理由だけでなく、ネット証券各社が提供しているサービス内容の強みを比較した上で、自らにとって最適な証券会社を選択していただきたい。

以下では、ネット証券を選ぶ際に意識したい3つのポイントを紹介する。

その1:取扱商品の限定化


ネット証券の手数料はシステム投資額に比例する。このため多くの利用顧客(手数料)を見込めない商品は必然的に取引対象外となる。そのため、債券、外国株、投資信託などの取引をすべて行うことができるネット証券は少ない。

大手総合証券のSMBC日興証券が運営する日興イージートレードの場合、外国株は中国株しか取引できないほか債券の取扱銘柄も限定されている。他の大手・メガバンクグループ証券にも同様の制約がある。ネット専業8社の取扱商品をみると、さすがに日本株が対象に含まれない会社はない。

しかし、証券会社と顧客の相対取引になる単元未満株(ミニ株)、債券、外国株、投資信託の品揃えには大きな違いがみられる。これらの商品の取り扱いを増やすためには、システム投資や顧客販売用の株式等の在庫調達を強化しなければならないからだ。手数料の安さをセールスポイントとするライブスター証券、GMOクリック証券はほとんど日本株の単元取引に特化している。

ネット証券で取扱商品の充実度を重視するならば、多額のシステム投資に耐えられるとともに豊富な在庫を有する専業最大手のSBI証券や大手・メガバンクグループ証券などで口座を開設するとよいだろう。

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その2:顧客サポートの簡略化


ネット証券は担当者が個別に対応する店頭・電話取引と比べれば画一的な顧客サポートにならざるを得ない。そのため、ネット証券選びの際には、デイトレーダーを重視している会社と中長期投資を重視している会社の見極めが必要になる。会社によって、投資ツールの整備、無料情報の提供などの注力分野が異なっている。

デイトレーダー重視型の松井証券は、機動的な発注、約定・残高・評価損益のリアルタイム表示などが可能な投資ツール「ネットストック・ハイスピード」、返済期限が当日の場合は手数料0円で金利・貸株料が1.8%以下の「一日信用取引」などを提供している。一方、マクロ経済情勢やマーケット動向に関する無料の情報提供は株価ボードやQUICKリサーチネットに絞っている。

中長期投資重視型のマネックス証券は、既存ポートフォリオに投資候補銘柄を追加した場合のリスク・リターンをシミュレーションする「MONEX COMPAS β」、現在のポートフォリオを踏まえ将来のリターン予測、追加購入の提案など資産設計サポートを行う「MONEX VISION β」などトレーディング以外のツールも提供している。

またマクロ経済・銘柄情報についても会社四季報をはじめ決算・業績予想、ストラテジスト・レポート、J.P.モルガン・アナリストレポートなどを幅広く無料で提供している。

松井証券が長期保有を前提とする投資家を相手にしないとか、マネックス証券がデイトレーダーを軽視しているといったことはないが、両者をはじめネット証券各社は単純な手数料競争に陥らないように、さまざまな工夫をこらし自社の特徴をアピールしている。

その3:リスク管理の簡素化


ネット証券の手数料が安い背景には、投資家が負う取引リスクが店頭・電話取引と比べ大きくなることもある。

顧客サポートが手薄であれば、投資家がミスを犯すリスクも高まる。ネット取引では書面の内容を誤解したり誤発注を行ったりしても、指摘してくれる人はいない。一方、店頭・電話取引の場合は、証券会社の担当者がこうした誤りを指摘してくれる可能性がある。また、トラブルの際には店舗担当者とコールセンターの両方に問い合わせることもできる。

ネット証券の場合は、特定会社の顧客だけがシステムトラブルの被害を受ける可能性もある。各社とも迅速かつ正確な発注処理や強固な情報セキュリティを謳っているが、それらの水準にはバラツキがある。

実際に相場過熱時の発注処理時間には、ネット証券ごとの差があると言われている。情報セキュリティの品質に至っては各社のポリシー、設立経緯、サービス内容、顧客数、財務基盤などが異なるため相当大きな違いがあるはずだ。

あらゆることに共通するが、痒い所に手が届く親切で丁寧なサービスを求めれば、当然コストはかさむ。自分にとって必要なサービスだけを提供してくれる業者を選ばなければ、サービス品質とコストの両面で十分に納得することはできない。自分の投資スタイルを明確にした上で、最適な証券会社を探すことが大切だ。

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