次に、教育費についてですが、表2に戻って、列(3)は「子供の教育費は他の支出を削ってでも、できる限り支払ってあげたい」かどうか、アンケートで尋ねた回答の平均値です。回答は、「1. 全くそう思わない ~ 10.全くそう思う」の10段階のスケールで聞いています。この数値が大きいほど、支払ってあげたいことを意味しています。

教育費低・中・高の何れのグループも7.3~7.9と大きくは変わりません。教育費は収入や持ちうる金融資産から、できるだけ支払ってあげたいとの考え方には大きな違いがないようです。

また、列(4)は「子供の教育費が足りない場合、借金しても仕方ない」かについて尋ねた回答です。教育費を自分が支払える予算の限度を超えて、支払う意思があるか尋ねたものです。回答方法は列(3)と同様です。「教育費中」が5.6ポイントであるのに対して、「教育費高」は6.1ポイントでした。「教育費高」の方が高くなっていますが、統計学的な差はありません。

これに対して、列(4)は「子供に十分な教育費をかけてあげないとすると、将来、自分が後悔すると思う」か尋ねた回答です。回答方法は列(3)と同様です。「教育費低」が6.9ポイントであったのに対して、「教育費高」は7.4ポイントと高くなっています(統計学的にも有意な差がある)。

教育費支出についての考え方は、各グループで大きく変わりがなかったのに対して、「教育費高」グループは、教育費に対する子供への効果を期待するだけでなく、教育費を支出しなかった自分への後悔の念という、教育費の効果とは異なった心理的な側面が影響していました。

これは、子供の問題というより、教育費を払う側の親の問題と言えるでしょう。子供にお金をかけるというより、自分のためにかけているとも言えなくはありません。このような理由により、直面する教育費が高くなりすぎで、後から必要になる老後の準備のための資金まで準備できなくなっていると思われます。

以上について回帰分析を利用して正式に検証した結果が図表6です。列(1)は「金融資産年収倍率」を被説明変数とした結果、列(2)は「目標到達率」を被説明変数とした結果です。

固定費の見直し5

住宅費割合は住宅費低に対する相対的効果、教育費割合は教育低に対する相対的効果を表しています。住宅費に関しては、列(1)と(2)のどちらも、住宅費の割合が高くなるほど、金融資産年収倍率及び目標到達率が有意に低下しています。教育費に関しては、列(1)では教育費割合中・高で金融資産年収倍率が有意に低下しています。また、列(2)では住宅費割合高で目標到達率が有意に低下しています。

年齢に関しては、年齢が上がるほどお金が貯まる傾向、学歴に関しては、大学卒であるとお金が貯まる傾向、健康状態に関しては、健康なほどお金が貯まる傾向がありました。これらは既存の研究と整合的な結果です。