二次相続,孫への相続
(写真=Thinkstock/Getty Images)

昨年1月の相続税改正を受けて、「資産が相続税の課税対象になる前に」と様々な資産譲渡のスキームが注目されている。国も、相続税の前段階で資産を移す贈与税に特例を定め、生前贈与を活用した資産移転の支援を強化させている

孫へ賃貸マンションを移転は「二次相続の回避」

その一つとして、
現在賃貸マンションをはじめとした財産を所有している男性と奥様、お子さん2人の家庭で、男性が被相続人となった場合を考えてみたい。

賃貸マンションを相続すると、管理や修繕などで意思決定が必要となる。それらを円滑に進めるために、よく「不動産は共有にしない方がいい」と言われている。奥様とお子さまに賃貸マンションの所有権を相続する方法が一般的だが、たとえば一足飛びに所有権をお子さんの息子(娘)さん、つまり被相続人の孫に移す、という方法はどうだろうか。

一足飛びに孫に相続することは、「二次相続、三次相続の回避」というメリットがある。まず、通常の相続について見てみたい。不動産の所有者推移を明示化してみよう。

【相続の過程】
男性が死亡→奥様が相続→奥様が死亡(二次相続)→子どもが相続→子どもが死亡(三次相続)→孫が相続

このフローのなかで、二次相続や三次相続はそれぞれ相続税が課税される。賃貸マンションのような不動産を相続する場合、他の法定相続人には現金や不動産以外の資産など代替資産を相続しなければいけない。

この状況を踏まえ、「男性が死亡→孫に相続」という方法で二次相続や三次相続を回避することができる。孫は通常、法定相続人ではないため、遺言などで指定することが必要となる。とても効果的な方法だが、以下ではこの相続方法の注意点もみていく。

孫への相続が「名義貸し」にならないように

孫に賃貸マンションの所有権を移す以上、いわゆる「マンションのオーナー業務」は孫が担わなければならない。孫に所有権を移しつつ、実際の管理は子世代が行っているのであれば、「税金目的の所有権移転」と指摘されかねない。孫が成年か、未成年かによって、対応は分かれてくるだろう。

(1)孫が成年の場合

孫が成年であれば、民法上の意思決定権があるため、相続は問題ないだろう。ただ、実際の賃貸マンション経営は修繕費など、様々な費用がかかる。孫世代がそれに対応する資産を有していない場合も多いため、ここで子世代の費用を使うのではなく、子から孫へ一定の現預金を譲渡し、対応する費用とした方が確実だ。

(2)孫が未成年の場合

問題は孫が未成年の場合だ。未成年は民法によって法律行為が制限される(民法5条1項)ため、対外的にも賃貸マンション経営のオーナーとは見なされにくい。よって、「実態は子世代が管理している」と指摘される可能性が高い。孫世代が未成年である時の一足飛びの相続は、法的リスクは高く、勧めにくい方法だ。

また、孫の年齢以外にも気をつけなければいけないポイントもある。たとえば被相続人から見て、長男の孫に不動産資産を相続したとする。その際にほかの資産を均等配分すると、「長男一家ばかり得をして」となりかねない。相続対策の結果、「争族」を招いてしまうという皮肉な結果となることに気をつけたい。

孫と一緒に会社をつくる方法の注意点

孫に所有権を渡すのではなく、子世代や孫を含めて会社を作る、という方法もある。この会社を俗に「資産管理会社」という。この会社に賃貸マンションの所有権を譲渡し、管理するという方法だ。資産管理会社は一家で株主(出資者)を構成するため、設立時に孫の出資分を増やすことで相続対策となるほか、個人が不動産所有権を持たないことで所得税の削減効果も期待できる。

ただ、資産管理会社の株式も、相続対象の「資産」だ。親世代が亡くなったときは、子や孫に相続する対象の資産となる。最初から妻を大株主とすると、妻が亡くなった二次相続では配偶者の税額軽減を使うことができない。このあたりはとても複雑なので、税理士などの専門家に相談しながら進めていくことが不可欠だ。

また、一般的に資産管理会社の設立は「株式会社」の形態が一般的だが「一般社団法人」で作るという動きも流行っていると聞く。一般社団法人にあたる「持分」が相続対象ではないため、「相続税を払わなくていい」と断言している専門家も多いようだが、これを鵜呑みにするのは危険だ。現時点で相続資産の対象ではなくとも、将来的に課税対象となる可能性は十分にある。

また、一般社団法人は決算時(期末)に法人税を納付しなければならず、やはり表面的な知識で設立をするとリスクが高い、税理士や、会社設立に強い司法書士を中心に、専門家を入れた対策が欠かせないと言えるだろう。

工藤崇 FP事務所MYS(マイス)代表
1982年北海道生まれ。北海学園大学法学部卒業後上京し、資格試験予備校、不動産会社、建築会社を経てFP事務所MYS(マイス)設立、代表に就任。WEBコラムを中心とした執筆活動、個人コンサルを幅広く手掛ける。ファイナンシャルプランナー(AFP)

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