(写真=PIXTA)
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今年の恵方は「南南東」 そもそも“恵方”って何?

恵方参りは現在でいう初詣の時に行われていたもので、江戸時代には盛んだった。『年中行事大辞典』加藤 友康ほか編、吉川弘文館)によれば、「正月の初詣での際、その年の恵方にあたる方角にあたる寺社を選んで参詣し、当年の幸福を祈願すること」(という

明治5年12月2日まで、日本ではいわゆる旧暦が使われていた。改暦にともない、明治5年は12月3日から12月31日までの28日間は存在せず、翌日、明治6年1月1日になった。改暦以前は、月の満ち欠けのリズムに合わせた「太陰太陽暦」の正月と、太陽の動きによって1年を24等分した「二十四節気」の立春は、ほぼ同時期に訪れていたため、節分の行事は、新年を祝う風習と重なっていることが多い。旧年の災厄などを禊ぎ祓え、新しい年の招福を願う行事が、節分と立春、つまり正月の風習として伝わっているのだ。

今でも暦をめくると、冒頭にある「方位吉凶図」で、歳徳に当たる方角が「歳徳神」の位置する方位が「恵方」であり、1年中大吉方位とされる。2016(平成28)年は、巳(み)と午(うま)の間の丙方(ひのえかた)、つまり、「南南東」というわけだ。

セブン-イレブンが火をつけた恵方巻の全国区化

近年にぎやかな「恵方巻」だが、もともと大正時代に大阪の花街でお新香を巻いた海苔巻を恵方に向かって食べて縁起を担いだことに始まるようだ。昭和に入ってからは、大阪の寿司業界や海苔業界が、恵方を向いて無言で巻き寿司をまるかぶりすると幸運に恵まれるという趣旨のチラシをつくったとも。

巻きずしは「福を巻き込む」ということで縁起がいい、包丁で切らずに丸ごと食べるのは「縁を切らないため」、無言で食べるのは「福が逃げてしまわないように」と願ってとのこと。だが、もしかしたら「家族そろって」というのは、海苔業界のチラシの影響とも考えられる。

そんな恵方巻を全国区にしたのは、セブン-イレブンだった。1989(平成元)年に広島の一部店舗で販売したことにはじまり、95(平成7)年には関西以西の地区で、1998(平成10)年には全国の店舗で販売するようになった。

日常化あり、高級化あり 華やかな2016年の恵方巻商戦

今年もコンビニ各社がそれぞれの商品を展開している。

セブン-イレブンは、「こだわりの上恵方巻」「福を呼ぶ節分 恵方巻」など7種のラインアップ。ローソンは、開運招く縁起物とし、京都の清水寺で祈祷した海苔を使用した5種の「恵方巻」を展開する一方で、「リラックマ恵方巻セット」を発売。ファミリーマートも4種を発売し、同時にTポイントプレゼントキャンペーンを展開、節分ロールなどの変わり種スイーツにも積極的だ。近年のコンビニ各社は、この季節に、予約受け付けに加え、おにぎりなどのコーナーにも恵方巻と称した商品を常時陳列販売している。

大型スーパーはグルメ路線。イオンは大間産のマグロを使用した「北海道新幹線開業記念 青函トンネル巻」ほか最高5000円で高級食材恵方巻を限定本数予約発売。イトーヨーカドーは、枡谷周一郎シェフ監修の「恵方巻×イタリアン」の展開に加えて、全国版と関西版に分けた恵方巻を販売。恵方巻を全国区にした企業としての関西への配慮とこだわりを感じさせる。

百貨店では、東武百貨店池袋本店が各店約100種の恵方巻が並ぶなか、最高2万5000円の「魚力」の「大間本まぐろ巻」が登場。大丸東京店のほっぺタウンは約120種を展開するなど、昨年の100種からさらにパワーアップさせている。
変わり種恵方巻に、意外な企業が参戦。「くら寿司」で発売になった「まめ巻」は、なんと豆大福を巻いた寿司。昨年話題になった坪井食品の「恵方巻サイダー」や、スイーツ業界各社がロールケーキやワッフルを恵方巻にアレンジした商品を発売するなど、縁起のよさにあやかった商戦を繰り広げている。

高級恵方巻やスイーツ恵方巻など、食してみたい商品がたくさんあるが、はたしてあの大きな海苔巻は、無言で1本をまるかぶりすることはできるのだろうか。もともとは、お新香巻きだった恵方巻の風習、胸につかえないよう気をつけてかぶりついていただきたい。(ZUU online 編集部)

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