J-REIT(不動産投信)・不動産投資市場
2015年第4四半期の東証REIT指数(配当除き)は、年初からの下落に伴う割安感の台頭や公募増資が一段落し需給面で改善が見られたことなどから、9月末比4.2%上昇した。セクター別では、オフィスが3.7%、住宅が3.7%、商業・物流等が5.1%上昇した(図表-18)。
また、日本銀行は12月18日に「量的・質的金融緩和の補完措置」を発表し、J-REIT各社の買入上限枠を従来の5%から10%に拡大した。12月末時点のバリュエーションは、純資産7.3兆円に保有物件の含み益1.0兆円を加えた8.3兆円に対して時価総額は10.5兆円でNAV倍率は1.3倍、分配金利回りは3.5%で10年国債利回り(0.3%)とのスプレッドは3.2%である。
2015年のJ-REIT市場を振り返ると、東証REIT指数の騰落率は▲7.9%となり4年ぶりに下落した。過去3年にわたる大幅高の反動や世界景気の減速懸念など背景に、1月の高値(1,990pnt)から9月の安値(1,509pnt)まで一時▲24%下落した。その後は追加の金融緩和期待から反発し下落幅は縮小した。J-REITによる物件取得額は約1.6兆円で前年から横ばいとなった。
第3四半期までは昨年を上回るペースで物件取得が進んだものの、第4四半期は2,881億円(前年同期比▲43%)と大幅に減少した。取得不動産の内訳は、オフィス(6,753億円、占率42%)が最も大きかったが、商業施設(前年比63%増)やホテル(前年比133%)の取得が大きく伸びた(図表-19)。
また、上場銘柄数は3社増えて52社、市場全体の運用不動産額は14兆円となり、市場の拡大は順調だと言える。デット資金の調達環境も良好で、投資法人債の発行条件は平均で期間7.9年、利率0.67%であった(図表-20)。
日経不動産マーケット情報によると、2015年の物件売買の総額は前年比▲13%減少し約3.6兆円であった。2015年はホテルの売買が倍増したほか、市場が過熱するなか企業買収を通じた資産の取得が目立ったとしている。
ニッセイ基礎研究所が1月上旬に実施した不動産投資市場に関するアンケート調査によると(*6)、現在の景況感について「良い」または「やや良い」と答えた割合から「悪い」または「やや悪い」と答えた割合を差し引いた値(DI、ディフュージョン・インデックス)は+86で、3年連続で大幅プラスとなった。
一方、6ケ月後の景況感について「良くなる」または「やや良くなる」の割合から「悪化」または「やや悪化」の割合を引いた値は▲3で、08年以来7年ぶりにマイナスとなった(図表-21)。
過去2年の景況感DIは、現況と先行きがともにプラスで、「良い現状がさらに良くなる」との楽観的な見方が大勢を占めていた。今回の調査では先行きのみがマイナスとなり、「良い現状が少し悪くなるかもしれない」という将来への警戒がやや高まり、景況感にピークアウトの兆しも見られる。
(*1)斎藤太郎『家計調査15年11月~11月の消費関連指標は総じて弱め』ニッセイ基礎研究所、経済・金融フラッシュ、2015年12月25日
(*2)被服及び履物▲16.8%、光熱・水道▲10.7%、交通・通信▲7.5%、教養娯楽▲3.9%など
(*3)斎藤太郎『2015~2017年度経済見通し~15年7-9月期GDP2次速報後改定』ニッセイ基礎研究所、Weeklyエコノミスト・レター、2015年12月8日
(*4)「半導体などの電子部品(3.6兆円)、自動車部品(3.4兆円)の輸出額に匹敵する規模で、日本経済を下支えする存在となっている」(日本経済新聞、2016.1.20)
(*5)J-REITが所有する先進物流施設では、賃料が上昇している。GLP投資法人(2015年8月期)の増額改定(全体の37%)における上昇率はプラス2.3%、日本プロロジスリート投資法人(2015年11月期)の改定賃料変動率はプラス5.2%である。
(*6)増宮守『景況見通しが一変、悲観が楽観を上回る~不動産価格のピークは15~18年と見方分かれる』ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2016年1月25日
岩佐浩人
ニッセイ基礎研究所 金融研究部
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