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Written by 長尾義弘(ながお・よしひろ) 55記事

楽しく学ぶ「お金」の教養講座

証券口座を開設したのに「投資できない人」が多いワケ

証券講座,開設
(写真=Thinkstock/Getty Images)

妻の実家があるため、長野へはよく行きます。昨年、軽井沢へ行ったときのことですが、旧軽井沢には何軒ものハチミツの販売店があります。その店頭では、何十種類のハチミツの試食を用意していて、いつも人で賑わっています。私も試食に参加して食べてみました。どれも美味しいのですが、さて、買おうとする段になるとどれを買っていいのかわからなくなり、あとでもう一度立ち寄ろうと思ったまま、結局立ち寄ることはありませんでした。

みなさんにも、似たような経験はありませんか? 人は「選択肢が多すぎる」と選択するのをやめてしまうのです。

選択の種類が多すぎると購買につながらない

この選択について研究したのが、コロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授の「ジャムの実験」です。「ジャムの実験」とは、スーパーの店頭で6種類のジャムの試食販売をした時と、24種類の試食販売をした時では、消費者はどんな選択をするのかというものです。このジャムの試食販売に立ち寄った人数の割合は24種類の方が60%、6種類の方が40%という結果になりました。選択肢の多い方にたくさん人が集まります。では、実際に購入した人の割合を見ると、24種類の方が3%、6種類の方は30%の人が買っていきました。人数で言うと6倍の人が6種類の試食販売で買っていたことになります。

つまり、人はあまり選択肢が多すぎると迷ってしまい、購入することをあきらめてしまうのです。この実験結果を取り入れて実践した企業もあります。P&G(プロクター&ギャンブル)社は、26種類あったシャンプーを、売上げの低い商品を廃止して15品目にしました。すると、売上げが10%アップしました。

選択肢が多いときに見られる3つのマイナス行動

選択肢が多い場合は、次の3つのマイナス行動をすることが分かっています。

(1)現状を維持する傾向
3種類しか置いていないアイスクリームのお店に入りたいと思いますか? やはり何種類も揃えているお店に入りますよね。しかし、何種類ものアイスクリームを取りそろえたお店で実際に売れているアイスクリームは、「バニラ」「チョコ」「イチゴ」の3種類が50%だそうです(※米国での研究結果)。つまり、選択肢が多いときは馴染みの味、または買わないという、現状維持を選択する傾向があります。

(2)利益に反する選択をする傾向
あまりにも複雑で選択肢が多い場合は、得すると分かっていても、選ぶのをやめてしまうことがあります。たとえば、読者のなかには老後などの将来に不安を感じている人も多いと思います。或いは、今後インフレが進むとどのようなリスクが生じるか不安を抱いている人もいるかもしれません。そこで、株式や投資信託の運用を始めようと証券口座を開設された方もいるのではないでしょうか。しかし、株式の上場銘柄は東証1部だけでも約1700銘柄、投資信託は5700本以上もあります。ちょっと数が多すぎて選択ができませんね。つまり、証券口座を開設したものの、あまりの数の多さに選択できない人が意外と多いのです。これを「利益に反する選択」と言います。

(3)選択したことに満足できない傾向
多くの選択肢の中から一つのものを選んだときの満足度は、少ない選択肢で選んだよりも低いという調査結果があります。恐らく、他にも良い選択肢があったのではないかと考えてしまうからでしょう。たとえば、景気の良いときに就職した人よりも、就職氷河期に就職をした人の方が、会社への満足度が高いという調査報告もあります。

先日、iPhoneのケースを買いに行ったときのことです。ショップの壁面一杯にずらりとケースが並んでいます。シンプルなケースを探していたのですが、それだけでも種類がたくさんあり、違いがまったく分かりません。私はそこで思考が停止してしまいました。結局、数週間ケースなしで使っていました。再び、ショップを訪れて数多くある選択肢から1つを選びましたが、残念ながらやっぱり違ったかな、という満足度の低い結果になりました。たぶん、これが選択肢の少ないものの中で選ぶと満足度が高かったに違いないと思います。

経営者は1週間で平均139件の決断をする

なぜ、選択肢が多いと良い選択ができなくなるのでしょうか。それは、判断と記憶力に限界があるからでしょう。ジョージ・ミラーの研究に「マジカルナンバー7±2」があります。この研究では人間の知覚判断や記憶は、7つ(±2)以上できないとの結果がでています。それ以上になると前のことは忘れてしまうそうです。つまり、7つ以上になると正しい判断が難しくなるのでしょう。

では、正しい選択をするのには、どうすれば良いのでしょうか。まず選択肢を分類したり、整理して考える必要があります。

先ほど7つ以上は記憶できないと言いましたが、たとえばハチミツの専門家ならば、何十種類ものハチミツの味を理解しているはずです。専門知識を有していて、ハチミツの味を整理分類できているからこそ、正しい選択ができるのです。

経営者は1週間に平均139件の決断をすると言います。その50%の案件は約9分以内に結論を出しています。また、12%の重要な案件には1時間以上の時間を費やします。どうでもいい案件と、重要な案件では検討に費やす時間が違います。その決断が最良の利益をもたらすためには「選択にこだわる」ことが重要です。経営であれ、投資であれ時間をかけて情報を集め、選択肢を整理分類したうえで決断する習慣を身につけることです。その経験の積み重ねによって「選択のスキル」も上がります。

あなたも、人生をより良いものにするために、選択のスキルを磨いてみませんか。

長尾義弘(ながお・よしひろ)
NEO企画代表。ファイナンシャル・プランナー、AFP。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。著書に『お金のツボ』(モバイルメディアリサーチ)『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『怖い保険と年金の話』(青春出版社)『商品名で明かす今いちばん得する保険選び』『お金に困らなくなる黄金の法則』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)。監修には別冊宝島の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。

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