目次

  1. 「人間の経済的な意思決定(行動)」について
  2. 人は無意識に「お金に色をつけている」
  3. 人は「将来の価値」を割り引いて考えてしまう
  4. 必要のない商品を購入させるテクニック
  5. 「ナッジ」がより高い効果を得られる

「人間の経済的な意思決定(行動)」について

2017年ノーベル賞経済学賞を受賞した、シカゴ大学経営大学院のリチャード・セイラー教授は行動経済学の権威であり、私たちに「お金とどう向き合うべきか」についてさまざまな気づきを与えてくれている。

同教授は「人間の経済的な意思決定(行動)」について心理学的な側面からアプローチしたことでも知られており、なぜ「人は常に合理的に行動できるとは限らない」のか。その理由を分かりやすく解明し、ひとり一人の経済行動が社会全体(市場)にどのように影響を及ぼすかを示した。

人は無意識に「お金に色をつけている」

同教授の研究成果の一つである「メンタルアカウンティング」は、「心の家計簿」とも呼ばれている。例えば、一着2万円のスーツを購入する際に「30円の価格差」は大した金額に感じないのに、1本100円のボールペンを買うときの「30円の差」は大きな金額に感じてしまう。いずれも30円であることに変わりないのに、人は無意識に心の中で「お金に色をつけている」ためにこうした差異が生じる。これが、すなわち「心の家計簿(メンタルアカウンティング)」である。

「一生懸命働いて稼いだお金は大切に使うのに、あぶく銭は無駄遣いしてしまう」「旅先ではつい財布の紐が緩んでしまう」そんな行動もメンタルアカウンティングが作用しているためと考えられる。なぜ、人は常に合理的に行動できるとは限らないのか? その理由の一つが「お金に色をつけている」からと考えられている。

人は「将来の価値」を割り引いて考えてしまう