最新のテクノロジーを駆使した、新たな資本主義の構造
ビッグデータやAIを活用することで劇的な効率化を図る「第4次産業革命」について、世界的な有識者らがダボス会議で議論するなど、熱い視線を注いでいる。実際に「産業革命」となるかどうかはともかく、ICTを中心に目覚ましい技術進歩が進行していることは誰の目にも明らかだ。
最新のテクノロジーが注目されるワケは、まったく新しい資本主義の構造を作り出しかねないからだ。資本主義の新たな仕組みは試行錯誤を通じて、現実的な形を作り上げていくだろうが、すでにその萌芽は現れてきている。現状、模索中である、この新・資本主義の新しい仕組みやビジョンの方向性を、すでに動き出しているビジネスや文明評論家の卓見を手がかりに、探ってみよう。
シェアリングエコノミーが先陣を切る新・資本主義への旅
資本主義の先端を読み解くキーワードの一つが「シェアリングエコノミー」で、従来型の取り引きにはない特徴を反映したものとされる。ただ、最新の取り組みから導き出される「新しい経済」を読み解くには、背景をよく理解する必要があるだろう。
ジェレミー・リフキン氏が作り出した「限界費用ゼロ社会」という「資本主義のパラドックス」の最初の兆候は、1999年、音楽配信サービス「ナップスター」とともに現れたという。
実際、さまざまなアーティストの音楽を手軽にダウンロードでき、自由にデジタル機器に移し替えられるナップスターは、非常に大きな驚きをもって迎えられた。その後、音楽業界との確執もあり、早々にサービスを停止してしまったが、音楽データを手軽にコピーしたり、友人と共有するのは、当時の音楽市場を根本から変えてしまいかねない、革新的な仕組みだったと言えるだろう。
デジタル技術を駆使してデータやモノを共有するプラットフォームを作る試みは、現在では、「ウーバー」に象徴されている。最近では、ウーバーが引き起こしたタイプの既成秩序の破壊を「ウーバライゼーション」と呼ぶ動きもあるという。ほかにも、空き部屋の貸出し仲介の「エアビーアンドビー」もシェリングエコノミーを実現していくプラットフォームとして注目を集めている。
いずれのプラットフォームも未使用だった「資源」を「共有」という形で活用する道を開く存在だといえ、立ち上がってくる「シェアリングエコノミー」の生態系が新たな資本主義の仕組みを作り出していく。そんな未来を構想できるだろう。
もちろん、国内にも同じ兆候を見て取れる。日本ではハンドバッグ、ドレスから、マイカー、空きスペースまでさまざまなシェア仲介サービスが起業されている。PwCが2014年に実施した調査によればシェアリングの市場規模は2013年の150億ドル(約1.6兆円)から2025年には20倍以上の3350億ドルと伝統的なレンタル市場とほぼ肩を並べるまでに成長すると予測されている。