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こんにちは、経済学修士号を取得後、株価推定の事業・研究を行っている「たけやん」です。宜しくお願いします。

国内(日本人なら日本)だけの資産を持つ投資家、あるいは、資産が国内資産に偏っている投資家は少なからずいます。こうした現象をホームバイアスと言い、学術分野でも実務分野でも研究対象になっていますが、このように保有資産を自国資産に偏らせることには大きなリスクを伴います。本稿では、ホームバイアスについて説明した上で、その3つのリスク(インフレによる資産の目減り、通貨安による購買力低下、経済危機によるリスク)を取り上げ、海外資産も含めてリスクを分散させるメリットについて論じます。


ホームバイアスについて

冒頭で述べたようにホームバイアスは、保有資産が自国のものに偏る傾向を言います。ホームアセットバイアス、ホームカントリーバイアス等と言う場合もありますが、どれも意味する所は同じです。

どの国でもある程度ホームバイアスが確認され、これはルーカス・パラドックス(資本蓄積が多い先進国から資本蓄積が少ない発展途上国に流れて資本収益率が均等化しない現象)の原因の一つとも考えられています。

最近の日本はホームバイアスの改善傾向にありますが、国際的に見ても日本のホームバイアスの度合いは大きいと言われています。

何故ホームバイアスが発生するかについては様々な仮説がありますが、代表的な仮説としてニッセイ基礎研究所(2010)は、

1情報収集コスト
2情報の非対称性
3行動経済学的要因
4為替リスク

と整理しています。それぞれを日本目線で考えてみましょう。

(1)は、日本の資産よりも海外の資産の情報を収集する方がコスト(時間・金)がかかるという意味です。

(2)も似ていますが、これは日本人が海外資産について得られる情報が、海外の現地投資家が得られる情報よりも相対的に少ない事を意味します。会計基準や言語が異なるので解釈に齟齬が生じたり、生活リズムの違いから情報を得られる時間にラグが生じたりといった非対称性が考えられます。

(3)は心理的な要因で、「海外資産への投資は怖い」といった漠然とした不安がホームバイアスを引き起こしているといったものが代表的です。

(4)は、為替レートが変化する事によって、円ベースで見た場合に海外資産が目減りするといったリスクを回避する行動が考えられます。

それぞれがホームバイアスの形成に寄与していると思われますが、国内資産に偏らせる事は、以下に説明する理由で非合理的です。

参考: ニッセイ基礎研究所「ホームアセット・バイアスが生じる要因(1)」『ニッセイ年金ストラテジー』2010年01月号


インフレによる資産の目減り

日本は長らくデフレ傾向にあり、最近はようやくインフレになってきた所であるので、インフレによる資産の目減りは余り意識されませんが、日本のソブリンリスクは大きく、もし破綻すると高いインフレに見舞われる可能性があります。実際、日銀の金融緩和によって国債の多くを買い付けている状態なので、現時点では破綻していませんが、破綻した時のリスクを大きくしているのは確かです。

現状では海外の方がインフレ率は高いですが、日本の場合は国債破綻というテールリスク(確率は低いが発生すると非常に巨大な損失をもたらすリスク)が存在するので、インフレリスクを分散させるという意味でも、海外に資産を分散した方が良いと考えられます。


通貨安による購買力低下

国債が破綻しなくても、現在の日銀の金融緩和が円安に誘導しているのは確かです。円ドルレートなら、日米のマネタリーベースで説明出来る部分が大きいです。(この点については別の機会に論じると思います。)

さて、円安になった場合ですが、日本円ベースで資産を持ち日本国内で生活するならホームバイアスに陥っても無関係だと思われるかもしれません。確かに、円安は輸出価格の下落を伴うので、好意的に語られる事がありますが、一方で円安は輸入価格の上昇を伴います。

輸入価格の上昇は、交易条件(輸出した財に対してどれだけの財を輸入出来るか)が悪化するのであり、個人レベルで見れば「購買力の低下」を意味します。日本資産に投資をして名目資産額は増えていても、上記のインフレや円安といった状況になれば、実質資産が減少して購買力が下がるのであり、投資の実質リターンは低くなるかもしれません。


経済危機によるリスク

金融緩和や国債破綻による円安や通貨安が無くとも、日本経済が危機的状況に陥る事は有り得ます。バブルの崩壊は代表的な理由ですし、日本の場合は大地震などが多いといったリスクもあります。こうした事象に見舞われると、資産価格が大幅に目減りするリスクがあります。

災害リスクや経済危機リスクを回避する為に、国内資産の中で分散投資を行う投資家は多いですが、日本は各地域の経済が極めて高く相関しており、どこか一地域が極端に好景気だったり不景気だったりという事は少ないので、国内資産に分散するだけでは、こうしたリスクはあまり軽減出来ません。


ホームバイアスの回避方法

ホームバイアスを回避する方法は、簡単に言えば「海外分散投資」です。基本的には国内資産をあまり保有しない事が良いのですが、では海外にどのように分散させれば良いかは難しいです。

筆者の立場としては、「グローバルマクロ投資」を実行するのが最もリスクとリターンのバランスが取れていると思います。この件については、別稿で紹介しておりますので、興味がある方は参照していただければと思います。

参考: 世界経済の成長に投資する〜富裕層ならではのグローバルマクロ投資とは?〜(ZUU online)