銀行など金融分野におけるデジタルマーケティングを題材にしたセミナー「デジタルとユーザーで創る金融の未来」が2月5日、都内で開催された。デジタル技術を活用して顧客への、適切な金融情報発信を図る「金融オムニチャネル」などについて議論。金融分野での革新的なサービス実現のカギになるとみられる「FinTech(フィンテック)」を、実際のサービス利用場面にどのように、落とし込んでいくのかなどについて意見が交わされた。
金融業界でも求められるITの知識
同セミナーについては、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG) の三菱UFJリサーチ&コンサルティングとネットイヤーグループ が開催し、「金融サービスの現場でのテクノロジーの重要性」を改めて強調した。
ネットイヤーグループの石黒不二代 社長兼 CEO が、「金融×デジタルマーケティング、金融業界のオムニチャネル構想」と題した基調講演に登壇し、セブン&アイ・ホールディングス で取り入れられているようなオムニチャネル戦略を、金融分野にも取り入れるというアイデアを打ち出した。
さらに石黒社長は金融分野でのオムニチャネルの具体例にも言及し、デジタルマーケティングを、金融網の中での活用方法についての一つのモデルを提示。利用者が求める情報を、自然な形で伝えていくという形での、顧客を中心に据えた上で、金融分野でのデジタル技術の生かし方についての一つの姿を示して見せた格好だ。
石黒社長に先立って、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの松田克信氏も講演。「コンシューマーの金融ニーズの多様化」「内部のIT化に伴う体制、人員強化」「機能の理解と獲得」が日本の課題とした上で、同氏は金融サービス提供者にもテクノロジーの知識が必要になってきている点を指摘した。
特に、IT体制の整備については、金融機関の中にも十分なITリテラシーを持つ人材が少ないのではないかとした上で、「かつては「金融を目指す人に求められるのはやはり、財務の知識と、あとは英語だと言われていたが、最近ではテクノロジーについての知識も求められているのではないか」と同氏は話した。
「データサイエンティストなどの人材が足りない」
さらに、金融へのデジタル技術の応用に詳しい有識者を交えて、パネル討論を実施。石黒氏と松田氏のほかに、PKSHA Technology の神谷勇樹事業部長、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)の平島亮シニアマネジャー、金融分野での新たなビジネスエコシステムの形成を目指す社団法人・FINOVATORS共同創業者の大久保光伸氏、ZUUの冨田和成社長も討論に加わった。
パネル討論では金融分野のIT活用の現状に言及。PwCの平島氏は「金融機関の現場での意識は変わってきていると考えてきており、顧客中心のサービスをにしようとなってきている一方で、組織が大きいため、変わっていないのではないか。そこが課題の一つ」だと話し、金融機関の現場でも顧客を中心としたサービスを実現に向けて動き出していることを指摘した。
PKSHA Technology の神谷氏は「顧客のことを理解して、適切なタイミングでコミュニケーションをとらなければならない」と、顧客接点を持つ時機の重要性を指摘。
あわせて、ZUUの冨田氏が「例えばジュニアNISAなどの購読履歴を知ることから、将来(の顧客行動)を予測できる可能性もある」「コンプライアンスに抵触しないコンテンツを作ることも課題だ」などと解説した。さらに、FINOVATORSの大久保氏は、「データサイエンティストなど実際にサービスを提供できる人や、業務を理解して説明できる人が揃っていない」と、組織体制面での課題についても解説した。
ほかにも、石黒社長は、銀行などは顧客のさまざまなデータを実際に持っているとした上で、「重要なマーケティングの情報は、購買履歴や金融関連のコンテンツの購読履歴などが役に立つ情報で、アプリを出して使ってもらう事で良い情報を得られるのではないか」などと話した。
ビットコインをはじめとした仮想通貨などさまざなな「フィンテック」が出てきている中で、金融サービスのマーケティングのための情報活用としてのしての「金融×IT」の可能性もまだまだ広がる余地がありそうだ。(ZUU online 編集部)
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