先行きは3ヵ月ぶりの改善も、停滞局面が続く

先行き判断DIは49.5と前月から+1.3ポイントの改善となった。参考系列として公表されている季節調整値は49.4と前月から▲1.7ポイント悪化した。

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先行き判断DIの内訳をみると、家計動向関連が前月差+1.6ポイント、企業動向関連が同+1.0ポイント、雇用関連が同▲0.8ポイントとなった。雇用関連(54.4)が高水準を維持する一方で、家計動向関連(48.8)、企業動向関連(49.2)が依然節目の50を下回るなど中国の景気減速懸念や株安・円高を受けて、景気の先行きに対して慎重な姿勢が優勢となっている。

家計動向関連は、「季節の変わり目になり、暖かくなると人の動きがまた出てくる」(北関東・衣料品専門店)など、春物商材の需要増を期待するコメントが散見された。

一方、「中国経済の不調、世界的な株安、ガソリンの値下げなどにより円高、株安基調が続くとみられるなかで、食品に対する支出は控えられるのではないか」(東北・スーパー)や「原油安、株安の状況が続けば、高額品の売上に影響が出ると予想される」(近畿・百貨店)などのコメントのように、株安・円高によって消費が押し下げられるとの懸念が高まっている。

また、足元では人民元安・円高の進行もあって「中国人客の売上の伸びは前年比で依然としてプラスであるものの、景気減速を背景として、増加率が鈍化してきている」(近畿・百貨店)といったように、訪日外国人旅行客の購買力低下を不安視するコメントもみられた。

企業動向関連は、「中国経済が不安定であり、また、原油安のため景況感は改善しない」(北関東・金融業)や「中国の景気後退とエネルギー価格の低迷から、景気は低迷している」(南関東・金属製品製造業)といったコメントからも、企業は海外景気や原油安への警戒感を強めていることが窺える。

雇用関連は、「景気の先行きが不透明なため、企業が人材の採用に慎重にならざるを得ない状況にある」(北海道・求人情報誌製作会社)や「今月の株価の影響や中国経済を含む世界の状況により、少し不安材料が出てきている」(中国・学校)など、景気の先行き不安から雇用環境が厳しくなるとの懸念も高まっているようだ。

個人消費の低迷が続くなか、訪日外国人旅行客による観光需要などが景況感の下支えとなっているものの、中国経済の動向など海外情勢の不透明感もあり、景況感は足踏み状態が続いている。また、個人消費は名目賃金の持ち直し、物価上昇率の低下による実質所得の押し上げなどから回復しているものの、そのペースは緩やかに留まっており、景況感を押し上げるまでには至っていない。

2016年に入ってから中国の景気減速に対する懸念が再浮上して以降、株安・円高の進行に歯止めがかかっておらず、こうした状況が続くようであれば企業や消費者心理のマインドを一段と冷やしかねない。新たな押し上げ材料が不在のなか、相次ぐ懸念材料が下押し要因となることから、景況感は当面停滞局面が続く公算が大きい。

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岡圭佑(おか けいすけ)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部

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