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(写真=Thinkstock/Getty Images)

2015年10-12月期の実質GDPは前期比-0.4%(年率-1.4%)とコンセンサス(同年率-0.8%程度)を下振れた。7-9月期の前期比+0.3%(年率+1.3%)からマイナスに転じた。米国などでもみられた10-12月期の成長率の下振れが日本でも確認された。

2015年は1-3月期に前期比年率+4.2%と強いスタートを切ったが、4-6月期に反動でマイナス(年率-1.4%)、7-9月期にプラス、そして10-12月期にマイナスと不安定であった。グローバルな景気・マーケットの不透明感が強く、期待された企業活動の拡大が持続的にならなかったのが原因とみられる。10-12月期のマイナス成長は、暖冬の影響を筆頭に、いくつかの下押し圧力が重なってしまった結果である。

企業心理の悪化、政策対応の遅れ…

一つ目は、グローバルな景気・マーケットの不透明感が強くなり、企業心理が悪化してしまったことだろう。実質輸出は前期比-0.9%(7-9月期同+2.6%)とマイナスに転じてしまった。実質輸出も前期比-1.4%(7-9月期同+1.3%)と弱かったが、純輸出の実質GDP前期比寄与度は+0.1%と小さかった。

実質設備投資は前期比+1.4%(7-9月期同+0.7%)となんとか2四半期連続のプラスを維持した。短観などで堅調であることが確認されていた設備投資計画の実施は遅れているようだが、進捗が見られたことは安心材料だ。企業のインフレ期待が上昇していれば起こるはずの在庫投資もみられず、在庫調整が前期比寄与度-0.1%(7-9月期同―0.2%)と成長を引き続き下押した。在庫調整が進展したことは、先行きの景気底割れを回避する材料でもある。

二つ目は、政策対応の遅れだ。10月30日に日銀は成長率・物価の予測を大きく下方修正し、2%の物価目標の到達時期を後ずれさせたにもかかわらず、景気・マーケットの不安定感を過小評価し、追加金融緩和に踏み切らなかった。

その後、12月18日には資産買入れオペを強化する補完策を決定したが、マーケットには日銀の量的質的金融緩和の限界を意識させてしまい、円高の動きを止めることはできなかった。政府も秋の臨時国会を10年ぶりに召集せず、早期の経済対策が実施される期待がしぼんだ。

結局、日銀が追加金融緩和をし、国会が2015年度の補正予算案を可決したのは1月となり、政策対応の遅れが、企業・消費者心理の悪化を加速させてしまったようだ。10-12月期の政府支出(政府消費と公共投資)の実質GDP前期比寄与度は0%であった。1-3月期には政策効果が現れてくる可能性が高い。

暖冬の影響で消費が下振れ

三つ目は、昨年4月の消費税率引き上げによる消費者心理の萎縮がまだ残っている中で、深刻な暖冬により、冬物商戦と観光が打撃を受けたことだ。実質消費は前期比-0.8%(7-9月期同+0.4%)と極めて弱かった。グローバルな景気・マーケットの不透明感が強くなる中で、政策対応が遅れたことも、消費者心理を悪化させたと考えられる。

この暖冬などによる消費の下振れはあまりに大きく、実質GDP前期比寄与度は-0.5%となり、マイナス成長のすべてを説明できてしまう。1月以降は逆に冷え込みが強くなり、冬物商戦と観光は持ち直しているようだ。アベノミクスの成果としてのインバウンド消費は、訪日外国人のリピーターも増えており、いまのところ、人民元安の大きな影響はみられず、堅調さは維持されていると考える。

四つ目は、大幅な原油安による交易条件の改善が、GDPデフレーターを引き続き押し上げ、名目対比で実質成長率をテクニカルに下押してしまっていることだ。GDPデフレーターは前期比+0.1%(7-9月期+0.3%)と、5四半期連続で上昇している。10-12月期は暖冬による消費の下押しがあまりに強く、名目GDPも前期比-0.3%(7-9月期同+0.6%)とマイナスになってしまった。

しかし、この暖冬と、消費税率引き上げの反動のあった2014年7-9月期のマイナスを除けば、アベノミクス開始後ほぼ一貫して拡大している。アベノミクスは、企業を刺激して、企業活動の回復の力を利用してデフレ完全脱却を目指すものであるので、まず必要なのはマイナスであった名目GDP成長率をプラスにして、企業が前を向いてリスクテイクができる経済環境を整えることが第一目標である。企業は、実質ではなく名目で活動しているので、企業収益が好調なのは名目GDPが強く拡大していることが理由だ。

雇用・所得環境は改善傾向

このようにいくつかの下押し圧力が重なった一方で、失業率の持続的な低下など、雇用・所得環境には明確な改善がみられる。一人当たりの平均賃金は労働需給のタイト化などを反映した臨時雇用の増加で伸び悩んでいるが、総賃金(雇用者の賃金の合計)はしっかり増加していることが確認された。

10-12月期の総賃金は前年同期比+1.8%(7-9月期同+1.7%)と強い伸びを見せている。アベノミクスの前には総賃金の伸び率はほぼ0%またはマイナスであったが、既に2%程度まで加速してきている。総賃金の伸び率の加速は物価の上昇の加速と消費税率引き上げの影響に消されてしまい、実質所得の増加の恩恵を家計は受けることができなかった。しかし、2016年は原油安やこれまでの円安の価格転嫁の一服により物価が伸び悩み、アベノミクス開始後はじめて、家計が実質所得の増加を実感できるようになると考えられる。

消費税率引き上げにより下押しを受けた2014年の弱い実質GDP成長率(0%)の後も、2015年は+0.4%と潜在成長率なみの水準にとどまってしまった。2016年は、1月以降の政策効果の発現、米国を中心とした先進国が堅調な回復を続けて新興国経済が減速した状態から脱していくこと、実質所得増加による消費の持ち直し、企業収益の拡大から雇用不足感を背景とした総賃金と設備投資の拡大への動き、閏年のテクニカルな押し上げ(1-3月期は前期比プラス成長に復するだろう)、そして2017年4月の消費税率引き上げ前の駆け込み需要などにより、実質GDP成長率は2015年よりは上昇すると見込まれる。

安倍首相は、2017年4月の消費税率引き上げまでに日本経済を確実にリフレイトするという決意と成長戦略の遂行を表明している。2016年の1%程度の実質成長率はアベノミクス成功のための必要条件であると考えられるが、リスクが高まって来ている。このままグローバルな景気・マーケットの不透明感が強い状態が続けば、2016年度の政府予算成立後、早急に景気対策がまとめられる可能性が高まってきたと考える。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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