クレディ・スイス

ニューヨーク州の金融当局は、スイスの金融大手クレディ・スイスに対して、顧客の州税の脱税をほう助したかという疑いで捜査が行われていました。この件に関しては、ニューヨーク州金融サービス局(DFS)所属のベンジャミン・ロースキー局長が、2月下旬にクレディ・スイスに対する調査を開始したと、関係筋が明らかにしていました。そして5日、このスイス金融大手クレディ・スイスに対する捜査について、最大で16億ドルを支払い和解する方向で米司法省と協議していることが新たに分かりました。また、クレディ・スイスが検察側から過失を認めるよう働き掛けられていると、関係筋によって明らかになっています。

この件において和解に向けた協議が現在進められており、近日中に結果が発表される可能性があるということです。この件に関して、現状では、クレディ・スイスの広報担当者はコメントを控えている状況です。米国民の脱税ほう助疑惑については、2009年、スイスのUBSが7億8000万ドルを支払うことで和解し、顧客情報を提供することで合意しました。

2009年、世界有数の規模を持つ大手金融でスイスを拠点とする、スイスプライベートバンクのUBSは、米国人顧客の課税逃れをほう助したとして、米政府から情報開示を求められるという問題が起こりました。同じく2009年、米国の住宅バブル崩壊によって起こった世界金融危機により、当時金融危機の傷が深かった米国政府は、税収源の拡大を求めていました。そうした側面もあり、米国政府は、UBSに、米国人の顧客名簿を提出するように求め、最終的にこの問題は、UBSが米国人顧客の脱税ほう助を認める形となり、7億8000万ドルの罰金を支払い、およそ250人分の顧客名簿をUBS側が提出することでひとまずの終焉を迎えました。 その後、UBSは米国人顧客向けオフショア業務から撤退することを約束し、当時、スイスのプライベートバンクは終わった、とまで言われる始末でした。さらにその後、スイスの資金が香港やシンガポールなどその他の金融センターに流れてしまったということです。しかし、それら香港やシンガポールでの規制も厳しくなることで、流出したマネーの一部はスイスに還流することになりました。

そこにきて、米国が再び富裕層への取り締まりを強化する動きを見せ、スイスのプライベートバンクは厳しい立場に立たされることを余儀なくされています。これには、富裕層課税の強化を再び狙う米国の意図が垣間見えますが、こうした流れの中で、スイスのプライベートバンクはさらなるビジネスモデルの転換が求められるでしょう。

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