証券アナリストジャーナルの最新号5月号に「日本の投資信託が抱える課題」との論文が寄せられています。 要約すると日本のファンドは「資産を管理する」より「資産を集める」ことが最優先となりコストが高くなっているという内容です。
日本の信託報酬額の平均はアメリカのほぼ倍です。さらに日本では年々上っているのに対し、アメリカは年々下がっています。手数料もアメリカより高めです。販売当初より手数料分を超えた基準価格の投資信託が日本にどれだけあるでしょうか。また、その基準価格を超えてもファンドは信託報酬を含んだ運用管理費を超える収益を上げ続けないと投資家の利益とはなりません。これらのコストが少し下がるだけで、たちどころに投資家への還元となるのです。
また、アメリカではファンドマネージャーが自分のファンドにどれだけ投資しているか確認できますが日本では開示されません。 さらなる日本の特徴として、ただただ人気のテーマであるファンドを新規で組成し、アクティブファンドと銘打ったファンドでもインデックスファンドと運用成果の差は本当に小さなものだったりします。
なぜ日本ではこういったことがまかり通っているのでしょうか?
それは売れるからです。 投資信託は確かに専門家に投資を委託する商品には違いありません。 しかし、そのファンドが本当に投資対象として適切なのか、その選択まで委託しては元も子もありません。得てして、 売れ筋ランキングや総資産総額ランキングを見るとファンドのいい面だけが目に映ります。自分で選択しているようで販売会社にコントロールされた心理状態にはなっていないでしょうか。
一時的な人気テーマの過去の運用実績もいいに決まっているのです。なぜなら過去から今にかけて人気なのですから。投資するのは過去ではなく未来ということを強く意識しなければなりません。 購入の際の手数料を気にされる方は多いと思いますが表立って見えない信託報酬はどうでしょうか。すべて販売会社サイトのファンド紹介の詳細部分、なければ目論見書には必ず記載があります。信託報酬が支払われるということは基準価格の下落要因なのです。 今までのやり方で売れなければ、新たに組成されるファンドは見直しを迫られます。 つまり、投資家の方、一人一人が賢くなることで日本の投資信託も大きく方向転換できるはずなのです。
証券アナリストジャーナルは日本証券アナリスト協会のホームページで論文ごとにダウンロードが可能です。有料ではありますが投資信託を保有、または購入を検討されている方は一読し考察されてみてはいかがでしょうか。
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