インタビュー,マネーフォワード
(写真=MoneyForward)

ライフスタイルが多様化して家計管理の方法も変化していて、スマホなどで「家計簿アプリ」を活用する人が増えている。最近は、家計の元になるお財布がいくつあっても世帯の資産状況を一目で把握できる機能を備えるという。さらには、入出金と残高の管理だけでなく、将来にわたるキャッシュフローも把握できるようになりつつある。ITと金融サービスの融合を意味する「FinTech(フィンテック)」が注目されるなか、家計簿アプリも急速に進化し、家計の「見える化」が進んでいるのだ。

日々の入出金がスマホ上に「見える」

春からの新年度を目前に控えた今は、新生活やゴールデンウイークという、何かと入り用の多い季節も目前。家計管理もしっかり始めるタイミングではないだろうか。そこで、家計簿アプリの代名詞的存在、約350万人が利用する自動家計簿・資産管理サービス・アプリ「マネーフォワード」を運営するマネーフォワード社を訪ねた。

まず同社PFM本部にてサービス企画を統括する森裕子氏にサービスの特性をうかがうと、「アグリゲーション(集約)です」との答えだった。これは「バラバラになっているお金の情報を整理して、家計の課題を『見える化』するもの」(森氏)とのことだ。

従来、銀行や証券会社の口座やクレジットカードの引き落としなどのお金の動きを確認するには、それぞれの金融機関、サービスのサイトにいちいちログインする必要があった。しかしマネーフォワードは国内の全銀行を含む2580以上の金融機関と連携しており、ネットサービスの口座を持っている金融機関の利用履歴や残高情報をアプリが自動的に集めてくれる。また毎日の買い物で手にするレシートを、スマホのカメラ機能を使って入力する管理機能もある。こうして自動、または手動で入力した情報をもとに、アプリが家計簿を自動的に生成。分かりやすくグラフ化してくれるため、自分のお金の動きや状態が一元管理でき、ひと目で把握できるのだ。

最近はコンビニやスーパーなどでの小口決済でもクレジットカードや電子マネーを使って現金をあまり使わないという人も増えている。そういう人にとってみれば、自分のお金の動きのほとんどはマネーフォワードだけで完結できる。

ここで忘れてはいけないのは、アプリでは銀行の口座番号や振込用のパスワード、クレジットカード番号を登録する必要はないということ。登録する情報は、あくまで金融機関のネットサービスにログインする際のIDとパスワードであり、その情報は暗号化して管理されている。

森氏は「家計や資産について最適なバランスを考えるのは、意外と難しいものです。近いうちにマネーフォワードは利用者の家計の課題を抽出して、家計改善の提案をしますと話す。

約350万人が使っているだけあって、同社には年齢や性別、年収、家族構成などあらゆる利用者のデータがあるという。そのため、自分と似たような属性の人たちのデータと比べることもできる。お金の話は知人や周囲の人とはしにくいものだから、統一データとの比較で、自分の家計の状態が他の人と比べて、いいのか悪いのかが客観的にざっくりとでも分かるのはありがたいだろう。

海外ではPFMという言い方が一般的

マネーフォワード
(左から)中出、森の両氏(写真=FinTech online編集部)

ここまでマネーフォワードを「家計簿アプリ」と呼んだが、はたして「家計簿」にとどまらない機能を持っている。実際、PFM本部開発リーダーの中出匠哉氏によれば、「海外ではPFM(パーソナル・ファイナンシャル・マネジメント/個人財務管理)という言い方のほうが一般的です。マネーフォワードもPFMサービスを提供しています」と説明する。

このマネーフォワードを使うようになってから、自分のお金の状態に初めて気が付く利用者が多いという。これは何もお金に無頓着だったというわけではなく、収支のバランスが「見える」ようになるため、例えば特別に支出が多い月や、子育てのある時期において家計が一時的にマイナスになっていることなどが分かるようになるからだ。つまり自分を取り巻くお金の流れを円滑に知ることができるようになったということなのだ。

利用者にとっては、家計や資産の管理がラクにできるようになれば言うことはない。前出の森氏はPFMの効果・効用について、「結婚や出産、自宅の購入などの大切なライフイベントにおいても、家計を正しく把握していることで、お金の面から将来を見通せるようになる」と指摘した上で、「お金をどう管理していいか分からないし、(お金が理由で)やりたいことができないという方も多いと思います。そう言った悩みを無くしたいという使命感を持っているんです」と力を込める。利用者の5割強は男性のようだが、「女性の方にもぜひマネーフォワードを使っていただきたいです」と笑顔で付け加える。

「家計はこうあるべき」という黄金比率は絶対ではない

マネーフォワード
(写真=MoneyForward)

マネーフォワードと同種のサービス、アプリもあるし、家計や資産管理に関する情報は、ネットを中心に洪水のように、はん濫している。その中でマネーフォワードが目指していることは、「その人にあった家計のプランを提供すること」だという。いくら「食費はこれくらいがいい」「通信費はいくら以内に」という情報があっても、それが「自分に合ったもの」でなければ意味がない。

森氏も「家計には個人の嗜好が大きく影響します。たとえば他人より食費を多くして食生活を充実させたいという考え方があってもいいわけです。一般的な家計改善の黄金比率を当てはめることはできないんです」と説明する。

そこで同社は、アプリによる自動的な提案と同時に、「プレミアム会員向けには、人(ファイナンシャル・プランナーや会計士など)の手を介したアドバイスを受けられる機能もあり、両側面から家計改善に寄与している」(中出氏)という。こうした使い分けによって、数百万人それぞれに合った家計改善案を提供しようと努力を重ねているのだ。

利用者が拡大する同アプリだが、機能やUIの改善は日々続いている。進化し続ける家計簿アプリを上手に活用すれば、お金の話は今よりも身近なものになるだろう。将来の資産形成もしやすくなり、ライフイベントも充実させられるはずだ。

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(写真=FinTech online編集部)

浸透しはじめたとはいえ、まだまだ利用者の割合は高くはない。だが「マネーフォワードが実践するPFMは、10年後には当たり前の考え方になっていると思います」と中出氏がいうように、個人の資産を、自分で気軽に管理する時代は遠くないだろう。なぜなら、それが賢い投資、豊かな生活への第一歩といえるからだ。( FinTech online編集部

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