40代といえば、年収や会社の役職が上がり、働き盛りといわれることも多い年代だ。しかし同時に、子どもの進学資金や住宅ローンなどの支出がかさみやすい時期でもある。2019年に「老後2,000万円問題」がメディアを騒がせたこともあり、将来のお金について不安を感じる場面は多いだろう。

今回は「40代の平均貯金額」や「老後に必要な貯金額」について解説していく。40代からの貯蓄のコツも紹介するので、お金のことで不安を感じている人はぜひ参考にしてほしい。

40代の平均貯金額は?年収別の貯金額の目安も紹介

貯金額
(画像=PIXTA)

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査・二人以上世帯調査(2019年)」によると、40代の二人以上世帯の平均貯金額は694万円だ。

このうち、預貯金は293万円。それ以外の資産は、生命保険や株式、投資信託などだ。40代ともなると、資産運用にしっかり取り組み、預貯金以外にも資産の分散を図っている人が意外に多いことが分かる。

一方、同調査では、貯金額の中央値は365万円となっている。中央値とは、すべてのデータを順番に並べた際に真ん中にくる値のことをいう。平均値は、場合によっては極端な値(資産を保有していないケースや、巨額の資産を保有するケース)に引きずられやすい。平均値と同時に中央値も確認することで、より正確に実態を把握できるのだ。

続いて、40代の年収別の金融資産保有額の平均値・中央値を紹介する。自分の年収や貯金額と比較し、参考指標として活用したい。

当然ながら、年収が上がると金融資産保有額も増加する傾向がある。ただし、このデータはあくまで1つの調査結果だ。平均値や中央値より金融資産保有額が多いからといって、必ずしも安心というわけではない。必要な資金を把握したうえで、いくらあれば安心かを自分なりに判断することが大切だ。

40代で必要な資金は?教育・住宅・介護費用について解説

40代は老後のために貯金を始めたいと考える時期だが、実際には支出が増大し、貯金どころではなくなるケースも多い。

40代で必要な資金には、子どもの教育費や住宅ローンの返済、親の介護費用などがある。ここでは、支出の例として「教育費」「住宅費」「介護費用」についてそれぞれ解説していく。

●1.教育費

文部科学省の「子どもの学習費調査(2018年)」によると、子どもの1年間の学習費(学校教育費・学校給食費・学校部外活動費)の総額は、以下のとおりだ。

公立幼稚園        22万3,647円
私立幼稚園        52万7,916円
公立小学校        32万1,281円
私立小学校        159万8,691円
公立中学校        48万8,397円
私立中学校      140万6,433円
公立高等学校(全日制)  45万7,380円
私立高等学校(全日制)  96万9,911円

子どもが大学に進学する場合、大学の入学金や授業料も必要になる。文部科学省の「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」によると、国立大学の入学金および4年間の授業料の合計は242万5,200円だ。さらに、教材費や実習費が必要となることも多い。

また、文部科学省の「私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」によると、私立大学の学生の初年度納入金額(入学料・授業料・施設設備費)の平均は文系で116万6,922円、理系で154万4,962円、医歯系学部で482万2,395円となっている。

単純計算で、文系・理系の授業料を4年間分とし、医歯系学部の授業料を6年間分とすると、大学在籍中にかかる入学金・授業料等の合計額は以下のようになる。

文系私立大学   352万3,665円
理系私立大学   486万1,810円
医歯系私立大学 1,916万1,405円

仮に、幼稚園から大学まですべて国公立を選択しても、学費の総額は約786万円となる。幼稚園から大学まですべて私立で、医歯系学部に進学すると仮定すると、学費の総額は3,747万円にも及ぶ。

自宅を離れて下宿するとしたら、家賃や生活費のための仕送りも必要だろう。また、子どもの人数が増えれば、教育費もそれだけ増加していくことになる。

●2.住宅費

国土交通省の「住宅市場動向調査報告書(2019年)」によると、住宅ローンの年間返済額は、全国平均で 123万2,000円、月額にすると約10万円となる。返済期間は「35年以上」に設定している割合が71.4%と最多だ。

住んでいる地域や資産の保有状況によって違いはあるにせよ、40代では年間100万円以上の住宅ローンの返済がしばらく続く世帯が多いと考えられる。

●3.介護費用

生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査(2018年)」によると、家族や親族の介護に要した費用の平均額は、1カ月当たり7万8,000円だ。

割合でみると、「15万円以上」が15.8%、「5万円から7万5,000円未満」が15.2%、「1万円から2万5,000円未満」が15.1%となっており、かなりバラツキがあることが分かる。

介護期間の平均は4年7カ月で、「4~10年未満」が28.3%と最多という結果だ。続いて「2~3年未満」「3~4年未満」「10年以上」が14.5%で並んでいることから、こちらもバラツキがある。

もしものときにあわてることがないよう、介護費用についてもしっかり備えをしておきたいところだ。

40代は負債がある世帯も多い?

ここまで紹介したように、子どもがいたりマイホームを持っていたりといった条件が重なると、40代はかなり出費がかさむ時期だと言える。そのため、40代で返済すべき負債を抱えている世帯は多い。

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査・二人以上世帯調査(2019年)」で、40代二人以上世帯の年収別の借入残高をみると、平均値・中央値は以下のとおりだ。

40代でまだ負債が残っている場合は、毎月・毎年の返済額をきちんと把握したうえで、老後のライププランを練る必要があるだろう。

40代は老後の備えを本格的に検討すべきタイミング

総務省の「家計調査報告・家計収支編(2019年)」によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の毎月の支出の平均額は、27万929円だ。一方、同条件の高齢夫婦無職世帯の実収入の平均は23万7,659円となっている。

差し引きすると、収入の大部分を年金に頼る高齢夫婦無職世帯の場合、毎月約3万3,000円の赤字が発生する計算だ。

同調査では、2017年は毎月約5万5,000円、2018年は毎月約4万2,000円の赤字になっているという結果も明らかになった。年度により差はあるものの、高齢夫婦無職世帯において、毎月3〜5万円程度の生活費の不足が発生していると考えられる。

毎月不足する金額を5万円と仮定して、夫婦が30年後(夫95歳、妻90歳)まで健在だった場合、不足金額は約1,800万円となる。これが、いわゆる「老後2,000万円問題」の根拠だ。

実際には、家庭の生活水準やライフスタイルによって、必要な老後資金の金額は異なる。2,000万円も必要ないというケースもあれば、2,000万円では不足するというケースもあるだろう。

大切なのは、早いうちからライフプランを立て、自分たちにとって本当に必要な老後資金を計算してみることだ。必要な金額を把握したうえで貯金することで、計画的に老後資金を準備し、ゆとりある老後生活を送ることができるだろう。

40代から始める貯金!お金を貯める3ステップ

ゆとりある老後生活を送るためには、40代のうちから計画的に貯金を始めることが大切だ。貯金をしたいと考えたとき、何から取り組むべきかを3つのステップで紹介する。

●ステップ1.収入と支出を把握する

まず、現在の収入と支出の状況を正確に把握することが大切だ。

可能なら、毎月家計簿をつけることが望ましい。手書き家計簿のほか、家計簿アプリを活用する方法もある。最近の家計簿アプリには、レシートを読み込んで自動でカテゴリー分けしてくれるなど便利な機能もある。ぜひ積極的に活用するようにしたい。

家計簿を毎月つける余裕がない場合、1カ月だけでもいいので、支出状況を整理してみよう。整理する中で、何にお金を使っているかが可視化され、無駄な出費に気づけるという効果もある。保険料や通信料、サブスクリプションなどの固定費を中心に、無駄がないか検討してみるとよい。

また、収支を項目ごとに整理して「子どもが独立したら不要になる支出」と「夫婦2人の生活でも必要となる支出」を分けて考えることで、老後に必要な資金が見えてくるだろう。

●ステップ2.資産状況を把握する

続いて、現在夫婦が保有している金融資産の合計額や、退職金・老後にもらえる年金額を確認する。

夫婦共働きの場合も、できればお互いに資産状況を共有することが望ましい。家計全体で収支を管理し計画を立てることで、着実に老後資金を貯めることができる。

「退職までに2,000万円」といった大雑把な目標では、なかなか現実味がわかず、貯金に身が入らないという家庭も多いだろう。しかし、収支と資産総額を把握し、具体的に老後の生活をイメージすることで、本気で貯金に取り組めるようになる。

いくら貯めればいいのかを1カ月単位・1年単位に落とし込み、目標と現状のギャップを確認しながら、計画的に貯金していくことが大切だ。

●ステップ3.資産運用を検討する

ライフプランを描き、必要な貯金額を計算したものの、なかなか現状のペースでは目標に到達しないというケースもあるだろう。そんなときに検討したいのが資産運用だ。

40代なら、定年までに20年前後の余裕がある。そのため、少額でもコツコツ積み上げるタイプの投資が力を発揮する。

初めて資産運用に取り組むなら、NISA(ニーサ)などの制度の利用も検討したい。NISAは、一定額までなら、投資で得られた利益が非課税になる制度だ。通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかるため、NISAを活用すればかなりお得に資産運用ができる。

また、お金を預ける銀行の金利にも注目したい。同じ金額を貯めていても、金利によって受け取れる利息額は大きく変わる。

例えば、メガバンクの普通預金の金利は税引前で0.001%程度だ。たとえ1,000万円の預金があっても、利息は年間たったの100円(税引前)しか受け取れない。しかし、金利が税引前で0.2%の銀行にお金を預けると、同じ1,000万円でも年間2万円(税引前)もの利息を受け取れる。その差は200倍だ。

効率よくお金を貯めるためにも、銀行ごとの金利差に注目し、できるだけ金利の高い銀行を選ぶようにしたい。さらに、必要に応じて資産運用にも取り組むことで、安心して老後を迎えられるだろう。

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