投資初心者や、しばらく投資から離れていた人にとって、資産運用でより重要なことは“安定性”でしょう。値動きなどのリスクを抑え、資産を安定的に運用するためには「分散投資」が効果的です。

いくつかの資産(商品)を組み合わせた「投資信託」を活用することが、ひとつの選択肢となります。今回は、投資信託などで安定的に資産を運用する「分散投資」のコツを解説します。

菅野陽平
監修者・菅野陽平
日本最大級の金融webメディア「ZUU online」編集長。株式会社ZUUM-A取締役。経営者向けメディア「THE OWNER」編集長。幼少期より学習院で育ち、学習院大学卒業後、新卒で野村證券に入社。リテール営業に従事後、株式会社ZUU入社。メディアを通して「富裕層の資産管理方法」や「富裕層になるための資産形成方法」を発信している。自身も有価証券や不動産を保有する個人投資家でもある。プライベートバンカー資格(日本証券アナリスト協会 認定)、ファイナンシャルプランナー資格(日本FP協会 認定)保有。編集著書に『富裕層・経営者営業大全』(一般社団法人金融財政事情研究会、2020年7月31日発売)

目次

  1. 分散投資とは何か
  2. 分散投資のメリット
    1. リスクを抑えられる
  3. 分散投資のデメリット
    1. 分散している分、短期間で大きな利益を出しにくい
    2. 自分で運用する場合は管理が大変だったり、資金に限界があったりする
  4. 分散投資で安定的に運用するコツ
    1. 分散されている商品に長期投資する
    2. 資産クラスを分散し、定期的にリバランスする
    3. 時間をかけて段階的に積み立てていく
  5. いま検討している金融商品は本当に分散投資できている?

分散投資とは何か

分散投資とは、投資対象や購入時期を分散することでリスクを抑え、安定した運用成績を期待できる運用手法です。

では、リスクを抑えるとはどういうことでしょうか?

金融商品におけるリスクとは、運用成績がマイナスになること(損失)ではありません。これはリターン(収益)の振れ幅のことで、例えば「リスクが大きい」とは、大きく収益が得られるかもしれないし、大きく損失が出るかもしれないという意味です。 分散投資には、主に次のようなものが挙げられます。

分散投資のメリット

分散投資にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここからは分散投資のメリットを解説していきます。

リスクを抑えられる

分散投資の大きなメリットは、前述の通りリスクを抑えることが期待できることです。

資産運用に関する格言に「卵を1つのかごに盛るな」という言葉があります。すべての卵を1つのかごに盛っておいた場合、なにかの拍子にかごを落としてしまうと、すべての卵が割れてしまいます。しかし、複数のかごに分けて盛っておけば、1つのかごを落としても、すべての卵が割れてしまうことはありません。

つまり、資金(卵)をひとつの資産(かご)に集中させず、複数の資産に分けて投資することで、ある資産に損失が発生した場合でも、全体の損失を抑える効果が期待できます。投資初心者やしばらく投資から離れていた人にとって、リスクを抑えて安定的に運用できることは大きな魅力でしょう。

分散投資
(画像=ZUU online作成)

値上がりする資産を当てることは非常に難しいです。国内債券、国内株式、外国債券、外国株式という主要な資産の年間上昇率を並べてみると、株式(国内株式と外国株式)が上位にくる年が多いものの、リーマンショックがおこった2008年には外国株式が50%以上下落したことがあります。

このような場合にも、株式や債券といった値動きが異なる傾向にある資産を組み合わせることで、リスクを抑える効果が期待できます。 

また、「資産の分散」や「地域の分散」だけではなく、購入タイミングを分散させる「時間の分散」を実践することもリスクの低下に繋がります。特に、毎回一定金額を購入する「ドルコスト平均法(定額購入方法)」を実践することによって、価額が安いときは多く、価額が高いときは少なく購入することになり、平均購入価額を安くすることができます。

分散投資のデメリット

一方で分散投資のデメリットにはどのようなものがあるでしょうか。ここからは分散投資のデメリットを解説していきます。

分散している分、短期間で大きな利益を出しにくい

リスクを抑えることは、同時に利益を抑えることにもなります。「商品の分散」、「地域の分散」であれば、購入資産を分散しているので、集中投資に比べて相対的に大きな利益を出しにくいと言えます。「時間の分散」であれば、購入時期を分散しているので、短期間で大きな利益を出すことは困難です。

もちろんどの場合でも、集中投資は大きな利益を期待できる分リスクが高いので、思惑が外れたときは大きな損失を被る可能性があります。

自分で運用する場合は管理が大変だったり、資金に限界があったりする

自分で運用する場合は管理が大変だったり、資金に限界があったりすることもデメリットでしょう。

例えば、株式1銘柄に投資するよりも数百、数千銘柄に投資したほうが分散効果は効きますが、自分でそれだけの数を日々管理していくのは大変です。また、数百、数千銘柄に投資を行うには大きな金額が必要となります。

分散投資で安定的に運用するコツ

ここからは分散投資で安定的に運用するコツについて解説していきます。

分散されている商品に長期投資する

投資先が分散されている商品に長期投資することによって、リスクを抑えることが期待できます。

あおぞら投信のシミュレーションによると、⽇本を除く先進国と新興国の各国株式市場の値動きを表す世界株式指数(※1)に1年間投資したときのマイナス発生率は34%でしたが、投資期間を10年に伸ばすとマイナス発生率が22%まで低下する結果になりました。

あおぞら投信
(画像:あおぞら投信ホームページより データの対象期間:1999年1月~2021年1月)

また、投資期間が1年間の場合の最大リターンは62.1%、最小リターンはマイナス53.1%でしたが、投資期間を10年に伸ばすと最大リターンは14.2%、最小リターンはマイナス3.9%となりました。最大リターン以上に最小リターンのマイナス幅が減っており、効率的な運用ができていることが分かります。

このように世界株式指数に投資することで自ずと分散投資を実現し、さらに投資期間を長くすることで、短期的な相場の動向に左右されにくく、リスクを抑えることが期待できるのです。

(※1)MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ネット配当込み、円換算ベース)

資産クラスを分散し、定期的にリバランスする

続いて、資産クラス(投資対象の種類や分類)を分散して、定期的なリバランスをかけてみた場合を見ていきましょう。

リバランスとは、ポートフォリオを構築した後に、資産価格が変動したことによって変化した資産割合を当初の割合に戻す作業を指します。ポートフォリオとは、金融商品の組み合わせのことを指します。一般的に、大まかな資産配分のことをアセットアロケーション、具体的な金融商品の組み合わせのことをポートフォリオと区別しますが、本稿を通じて、資産配分は具体的な金融商品が念頭にあると仮定し、「ポートフォリオ」という表記で統一します。

例えば、当初は「株式70%・債券30%」でポートフォリオを構築したとします。その後、株価上昇が起こると、ポートフォリオ内の株式資産の価値が上昇し、ポートフォリオの株式比率が上昇(相対的に債券資産の割合は縮小)して、「株式70%・債券30%」の割合が崩れてしまいます。仮に、ポートフォリオの比率が「株式80%・債券20%」に変化したとしましょう。

そこで、株式を10%分売却し、債券を10%分購入することで、当初の「株式70%・債券30%」の割合に戻します。これをリバランスといいます。

ZUU online作成
(画像=ZUU online作成)

たとえば、世界株式(※1)と先進国債券(※2)を7:3の割合とし、毎月リバランスをかけて10年間投資するとします。

あおぞら投信のシミュレーションによると、マイナス発生率は6%になりました。世界株式を1年間投資したときは34%、10年間投資したときは22%でしたので、先進国債券という異なる資産クラスを加えて、定期的にリバランスすることで、長期投資の効果に加えてさらにマイナス発生率が低下したことが分かります。

あおぞら投信
(画像:あおぞら投信ホームページより データの対象期間:1999年1月~2021年1月)

最大リターンと最小リターンにも注目してみましょう。

世界株式と先進国債券を7:3の割合とし、毎月リバランスして10年間投資した場合の最大リターンは11.1%、最小リターンはマイナス1.9%になりました。世界株式に10年投資したときの最大リターンは14.2%、最小リターンはマイナス3.9%というパフォーマンスでしたので、同じ投資期間でもマイナス幅が低下していることが分かります。

このように資産クラスを分散して、定期的にリバランスすることで、さらにリスクを抑えることが期待できるのです。

リバランスは個人でも行うことができますが、手間がかかります。運用会社によっては、異なる資産クラスに分散投資し、定期的にリバランスをおこなう仕組みの投資信託もありますので、そのような投資信託をうまく活用してみるのも良いでしょう。

(※2)ブルームバーグ・バークレイズ・グローバル総合インデックス(円ヘッジベース)

時間をかけて段階的に積み立てていく

ここまで、投資先を分散した商品(世界株式や先進国債券など)を、さらに分散して保有し(世界株式70%・先進国債券30%など)、定期的にリバランスをかけることでリスクを抑え、安定的な運用が期待できることを説明しました。

一方で株価が歴史的高値圏にある時点では、株式などのリスク資産を一度にたくさん購入することに不安を覚える人もいるかもしれません。そのようなときは、上記に加えて購入時期を分散させるのがよいでしょう。

仮に「株式70%・債券30%」のポートフォリオを作ることが一旦の目標であれば、30%分の債券はあらかじめ購入しておくとして、

a. 毎月5%ずつ株式比率を高めていき、14ヵ月かけて株式比率70%を実現する
b. 毎月10%ずつ株式比率を高めていき、7ヵ月かけて株式比率70%を実現する
c. 2ヵ月に一度5%ずつ株式比率を高めていき、28ヵ月かけて株式比率70%を実現する

といった方法などが考えられます。

aのケースを例にしてみましょう。

1ヶ月目に投資資金全体の5%分の株式を購入(ポートフォリオの割合は株式5%・債券30%・現金65%になる)、2ヶ月目にさらに5%分の株式を購入(ポートフォリオの割合は株式10%・債券30%・現金60%になる)、3ヶ月目にさらに5%分の株式を購入(ポートフォリオの割合は株式15%・債券30%・現金55%になる)、4ヶ月目にさらに……、と比率を高めていくイメージです。

一度に購入せず、時間をかけて段階的に積み立てていくことで買値を平均化でき、株価の上昇や下落に振り回される心配がありません。

このような「時間の分散」ではリスクをおさえられる一方で、手間暇がかかるのがデメリットでしょう。

「定期的に5%ずつ株式比率を高めていく」と言うのは簡単ですが、実際に毎回手続きをするのは若干面倒です。個人で完結することは可能ですが、運用会社によっては、上記のような運用を行っている投資信託もあります。また、中には明確なゴールを決めて運用をおこなっている投資信託もあり、一度投資をおこなうと値動きを頻繁に気にすることなく、安定的な運用が期待できます。そのような投資信託をうまく活用してみてはいかがでしょうか。

いま検討している金融商品は本当に分散投資できている?

今回は投資信託などで安定的に資産を運用する分散投資のコツを解説してきました。

分散されている商品を保有する、それらをさらに分散保有する、定期的にリバランスする、購入時期をずらすなど、複数の要素を絡ませることで、より分散投資の効果を高めることができます。

これらをすべて満たす投資信託も存在しますので、そのような投資信託を活用してもよいでしょう。

もし、いま検討している金融商品や運用手法があれば、それらは本当に分散投資できており、安定的に運用できそうなのか確認してみましょう。できていないようであれば、ぜひ上記のコツに沿って資産運用してみてはいかがでしょうか。


>>【合わせて読みたい】連載企画 投資信託で始める。究極の分散投資とは?

株式会社あおぞら銀行BANKウェブサイト:https://www.aozorabank.co.jp/bank/
あおぞら投信株式会社ウェブサイト:http://www.aozora-im.co.jp/

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