わが子たちに美田を買わず、そして残さず。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏や著名投資家のウォーレン・バフェット氏などは、自分の子どもたちに多くの資産を残さないことを明言。莫大な資産を、最終的には寄付して社会に役立てるためだ。では、これら富豪は、愛する子たちに財産以外の何を遺すのだろうか。
それは、自分たちが資産を築き上げたときに活用したイノベーティブな探求心とクリティカルな考え方であり、各方面に張り巡らせた豊かな人脈だ。そうした無形の遺産を子ども自身の責任で使いこなし、親の財産に頼り過ぎず、自分の力で成功することを求めている。
富裕層は成功に必要な「教育」を残す
その「成功力」に必要なものは、ズバリ、与え得る限り最高の教育である。米国の富裕層は、子どもが高校生くらいの年齢に達すると、マサチューセッツ州ボストンをはじめ、歴史ある東部諸州でアイビーリーグへの大学進学に特化した全寮制・寄宿学校であるボーディングスクールに入学させることも多い。政財界の有力者・法廷弁護士・医師・金融関係者などにボーディングスクール出身者が多数存在するのも、そうした背景がある。
名門校出身の厳しい教授陣が学業と生活を監督する環境で、エリートの子女が互いに切磋琢磨し、一生の財産となるネットワークを育んでゆくのだ。
米国以外にも、王族や貴族の子弟たちと机を並べられる英国、世界中の富裕層が競って子どもを留学させるスイス、英国の名門ボーディングスクールが分校を設立するアジアの英語教育の中心シンガポールなどに、こうしたスクールは多く存在し、日本人生徒にも広く門戸を開いている。著名な投資家ジム・ロジャース氏が2人の娘のために、シンガポールに教育移住したのは有名な話だ。